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海外の政治情勢 ー 下院のトランプ弾劾と民主党予備選「スーパー・チューズデー」

諸外国の政治情勢の中で注目すべきは、トランプ大統領に対する弾劾訴追が可決されたアメリカ、総選挙で与党保守党が大勝したイギリス、久しぶりに日韓首脳会談が行われた韓国、区議会議員選挙で民主派が圧勝した香港、年頭に総統選・議会選がある台湾である。

アメリカ

アメリカ国内政治では、野党民主党が過半数を握る下院議会が「ウクライナ疑惑」に関してトランプ大統領の弾劾訴追を可決した。訴追理由は、個人的利益のために来年の大統領選に外国政府の介入を招くという権力乱用があり、さらに権力乱用についての下院調査を妨害したという議会妨害があったという2点である。

トランプ大統領は、例のごとくツイッターに「極左、何もしない民主党によるとんでもないウソだ!これはアメリカへの攻撃であり共和党への攻撃だ!!!!」と猛反発しており、与党共和党も弾劾反対で結束を強めている。

今後は、訴追状が上院に送られ、下院が行った弾劾が審査されることになる。最終的な有罪判断には上院で3分の2の賛成が必要であるが、定数100議席のうち共和党が53議席と多数を占めているため、よほどの新証拠が出てこない限りトランプ大統領は無罪となる可能性が極めて高い。

加えて、弾劾はトランプ大統領の支持率を悪化させていない。政治専門サイトの「リアル・クリアポリティックス」によると今月2日から22日までの各種世論調査平均で、トランプ大統領の支持率は44.6%、不支持率は51.9%と、依然として不支持の方が高いが以前より差が縮小してきている。

一方の野党民主党であるが、来年の大統領選の候補を選ぶための討論会が断続的に開催されている。依然として混戦模様であり討論会では候補者間の相互批判があらわになっているものの、最近の傾向としてはジョー・バイデン前副大統領の支持率が安定している他、バーニー・サンダース上院議員の支持率も上昇傾向にある。また、3位以下の各候補者は支持率が頭打ち状態にある。

「リアル・クリア・ポリティクス」によると、12月4日から17日までの期間において、2020年大統領選民主党予備選候補者の各種世論調査での支持率平均は、ジョー・バイデン副大統領が27.8%、バーニー・サンダース上院議員が19.3%、エリザベス・ウォーレン上院議員が15.3%、ピート・ブーテジェッジ インディアナ州サウスベンド市長が8.3%、マイケル・ブルームバーグ前ニューヨーク市長が5.0%などとなった。

来年の予備選では、3月3日が多くの州で同時に予備選挙・党員集会が行われる「スーパー・チューズデー」となるが、特に大票田であるカリフォルニア州の予備選挙もこの日に開催されるため、この日にむけて競争が激しさを増しそうだ。

イギリス

イギリスでは、12月12日に行われた下院の総選挙でボリス・ジョンソン首相が率いる与党保守党が圧勝した。与党保守党が過半数を回復した議会で政府のEU離脱協定法案可決も可決されたことから、1月末のEUからの離脱はほぼ確実になったと言える。

韓国

過去最悪と言われるほど悪化している日韓関係であるが、24日に四川省の成都で開催された日中韓3か国の首脳による日中韓サミットの後、日本の安倍晋首相と韓国の文在寅大統領は1年3か月ぶりに首脳会談を行った。

日韓首脳会談では、日本側が徴用工問題で韓国政府に対して対応を求める一方で、韓国側は日本政府の韓国向けの輸出管理に全面的な見直しを求めた。双方の意見の隔たりは大きく、具体的な進展は無かったものの、早期解決を目指し外交当局間の協議を継続していく方針で一致した。翌日の韓国の新聞各紙は、首脳会談を1面で大きく扱い、双方の立場に違いは残ったとしながらも両首脳が直接意見を交わしたことを肯定的に伝えた。

韓国では、4月に議会総選挙が行われる予定で、文大統領の側近の曹国(チョ・グク)前法相が職権乱用容疑で逮捕状が請求されるなど政権基盤が緩んでいることから、文政権が日本に大幅に妥協できる余地はないとみられる。しかしながら、文政権側としても日本とのこれ以上の関係悪化も避けたいことから、当面は事務レベルでの折衝を重ねながら両政府間での合意実現を探っていくと考えられる。

香港

香港では11月24日に行われた区議会議員選挙で民主派が9割の議席比率で圧勝した。この結果に対して、中国政府と香港行政府は、抗議デモが香港社会全体に多方面の損害を与えており一層の取り締まりが必要だとして警戒心を強めている。

反政府デモは収束する気配はなく、クリスマスイブとクリスマスの24日、25日においても各地でデモが行われ、一部で警察との衝突に発展し警察がデモ隊に向け催涙弾を発射する事態となった。

台湾

台湾では、1月11日に総統選挙と議会選挙(立法委員選)が行われる予定であるが、香港への中国政府の介入が、支持率が低迷していた蔡英文総統に追い風になった。蔡総統が党主席を務めた与党民主進歩党(民進党)は台湾の政治的独立を党是としており、蔡政権誕生後から中国と台湾の関係が悪化し、野党国民党は蔡政権の対中政策を批判してきた。しかしながら、香港の混乱以後は、国民党の対中姿勢が融和的とみなされ同党の支持率が低下していった。

蔡総統と国民党候補の韓国瑜高雄市長との争いは、蔡氏の大幅なリードで推移しており、蘋果日報によると最新の世論調査結果は蔡氏の支持率が46.8%、韓氏の支持率は14.4%となった。一方、小選挙区比例代表並立制をとる立法委員選挙では、民進党の支持率は比例代表が32.1%、選挙区が36.1%、国民党の支持率は比例代表が20.4%、選挙区が20.8%となっている。

鈴木しんじ

鈴木しんじ慶應義塾大学SFC研究所上席所員

投稿者プロフィール

1972年生まれ、東京都中野区出身。東京工業大学博士(理学)。
東京外国語大学外国語学部フランス語学科卒、東京工業大学大学院社会理工学研究科博士課程修了。専門は政治経済学、公共経済学。
個人ホームページ https://www.suzuki-shinji.net/

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