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最近の国内政治動向 ー 再編を急ぐ旧民主系野党

与野党は、野党が内閣不信任案提出を見送る代わりに「桜を見る会」の問題に関して閉会中審査を行うことで合意し、臨時国会は終了した。しかしながら、閉会中審査においても、政府は野党からの調査要求に対して「必要はない」と回答を連発し、野党は反発を強めている。野党が森友・加計問題同様に来年の通常国会でも「桜を見る会」問題に関して安倍政権を厳しく追及することは間違いないが、決定打が出なければこの問題だけで安倍政権を退陣に追い込むことは難しそうである。

一方で、旧民主党の流れをくむ立憲民主党・国民民主党を中心に、社会民主党なども加えて衆議院会派「立憲民主・国民・社保・無所属フォーラム」全体の合流を目指す動きが加速している。来年の通常国会開会まで、国内政治に関してはこの話題が中心になりそうである。

これまで、立憲民主党の枝野代表は政党間の合従連衡を否定し独自路線を貫いてきた。しかしながら、この場に及んで方針転換したのは、参議院選挙での伸び悩み、支持率の低下、さらに同党が資金力に乏しい状況を脱せないことへ危機感を感じたからだというのが世間一般の評価だ。一方で、国民民主党は旧民主・民進党の「遺産」を受け継いでいるので比較的資金力は潤沢だが、支持率が1%前後で話にならない状態にある。同党の支持基盤は連合内の製造業系を中心とした民間労組(旧同盟系)で、旧同盟系労組は電力総連を中心に脱原発に激しく反対している。国民民主党内で立憲民主党との合流を熱心に求めているのは小沢一郎氏や同盟系労組への依存度が低い中堅若手であり、次期衆議院総選挙を控え危機感が強い衆議院側が中心だ。さらに、これまで吸収される形での合併を嫌っていた社民党も、立憲民主党とは政策的に近いことや単独では今後の展望が開けないことから、合流交渉に参加することを決定した。

もっとも、合流実現には紆余曲折がありそうだ。最大野党であることと野党内では支持率が一番高いことを背景に立憲民主党が政策面も含めて同党が他党を吸収する形での合流を求めているのに対し、国民民主党は政策面も含めて両党を中心とした対等合併の形をとる合流を求めている。政策面での一番の問題は原発を巡る立憲民主党と国民民主党のスタンスの違いだ。脱原発を掲げる立憲民主党が原発問題で国民民主党に妥協すれば、合併後のエネルギー政策は玉虫色になり旧民主党のそれに戻りかねない。国民民主党側としても、労組の影響力が強い参議院側が早期の脱原発実現を明記することに激しく反発するだろう。また、社会民主党に関しては、同党は地方支部や党員の力が強い構造の政党であり、地方支部職員の処遇をどうするかなども含めて党の意思決定に時間がかかることが予想される。

年末のこの時期に合流をめざすのは政党交付金の支給基準日が1月1日だからだが、年内中に「立憲民主・国民・社保・無所属フォーラム」全体の合併が実現するのは時間的にも厳しいかもしれない。立憲民主党・社会民主党が支持団体も含め旧日本社会党の流れをくむ一方で、国民民主党は旧社会党から分裂して結成された旧民社党の流れをくむので、仮に会派全体での合併が実現した場合は分裂以前の旧社会党の再統一とみることさえ出来る。ただし、原発問題で立憲民主党と国民民主党の合意が難航する可能性があり、国民民主党が分裂し参議院国民民主党以外の政党会派が先行して合併するかもしれない。

鈴木しんじ

鈴木しんじ慶應義塾大学SFC研究所上席所員

投稿者プロフィール

1972年生まれ、東京都中野区出身。東京工業大学博士(理学)。
東京外国語大学外国語学部フランス語学科卒、東京工業大学大学院社会理工学研究科博士課程修了。専門は政治経済学、公共経済学。
個人ホームページ https://www.suzuki-shinji.net/

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