9月11日、安倍首相は茂木敏充前経済再生担当相を外務相に、河野太郎前外相を防衛相にそれぞれ横滑りさせ、加藤勝信前厚労相を厚労相に復帰させるなどの人事を柱とした内閣改造を行った。今回の内閣改造では小泉進次郎氏が環境相、首相と近い江藤拓、西村康稔、萩生田光一、衛藤晟一の各氏がそれぞれ農相、経済再生担当相、文部科学相、一億総活躍相で初入閣を果たした。また党役員人事では二階俊博幹事長と岸田文雄政調会長は留任し、下村博文氏は選挙対策委員長に、甘利明氏は選挙対策委員長に、世耕弘成前経産相は参議院幹事長にそれぞれ就任した。
全体的に首相と政策的または人間関係的に近い議員の重用が目立つ一方で、先の自民党総裁選で安倍首相と戦った石破茂氏の派閥からは入閣がないなど、安倍首相への権力集中が目立つ布陣になったと言える。かつて、2006年に発足した第一次安倍政権は「お友達内閣」と揶揄され、翌2007年の参議院選挙での敗北と安倍氏の体調不良により短命に終わった。今回の改造については早速野党から「お友達内閣の再来」や「側近内閣」などとの批判を浴びているが、当時と決定的に違うのは当時に比べて野党が弱体化していることである。それゆえ、こうした側近重用が必ずしも政権の求心力を低下させる要因とはならないかもしれない。
現在、立憲民主党と国民民主党は衆参両院で統一会派を結成することに合意しており、これに野田前首相が代表を務める衆院会派「社会保障を立て直す国民会議」も加われば、三会派の合計議席数は117となり、2007年当時の民主党のそれを上回る。さらに、現在は社民党だけではなく共産党も含めた野党共闘が進んでいる。しかしながら、2019年現在の状況は以下の3点で2007年に比べて野党による政権交代がより難しい状況にある:(1)当時は野党内において民主党が衆参で圧倒的な議席占有率を有しており、野党各党の議席数の分散が広がった現在の状況とは全く異なる、(2)参議院での野党(立民・国民・共産・社民・れいわ)の議席数合計は2007年の参院選で与野党逆転した直後の民主党のそれを大幅に下回わる、(3)当時は民主党内の原発に対する意見の相違は大きな問題とならなかったが、今日では原発政策は最も重要な政策イシューの一つであり、国民と他の野党の間の原発政策の違いは共通公約策定の大きな制約になる。
さて安倍首相は9月下旬にニューヨークの国連総会に出席、その後トランプ米大統領と首脳会談を行い日米貿易協定を妥結・署名、10月上旬に秋の臨時国会を召集することを予定しているようである。臨時国会では、継続審議になっている国民投票法改正案、悪化する日韓関係への対応、中東ホルムズ海峡における米国が求める有志連合への対応、日米貿易交渉、年金財政検証、かんぽ生命保険の不正販売問題などが論点になるだろう。この中でも特にもめそうなのが国民投票法改正案だ。
同法案は、正式名称が「日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律案」ということからもわかるように憲法改正の手続を改正する法案である。同法案については、立憲民主党や国民民主党が賛成と反対のCM量の均衡を法的に保証するように求めており、与党側は先の通常国会において参議院選挙への影響を考え継続審議として成立を見送った経緯がある。すでに同法案は3回も継続審議に付されているが、参議院選挙が終わったことから安倍政権が本気で成立を目指す可能性は高く、同法案の審議を巡って与野党の対立が一気に高まりそうである。
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