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海外の政治動向 -早くもレームダックしつつあるボリス・ジョンソン政権

諸外国の政治情勢の中で注目すべきは、混迷を深める文在寅政権、逃亡犯条例が撤回された香港、早くもレームダックしつつあるイギリスのボリス・ジョンソン政権、そして野党民主党の大統領選候補者選びが本格化するアメリカである。

韓国

日韓関係は韓国による日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄、さらにソウル・釜山両市議会が「戦犯企業」と特定した日本企業に対して製品購入を控える努力規定を盛り込んだ条例案を可決するなど、相変わらず悪化したままでいる。しかしながら、今後の韓国政治および日韓関係に大きく影響を与えそうなのが、文大統領の側近であるチョ・グク氏(ソウル大学教授)の法相就任問題である。チョ氏はこれまで朴槿恵政権時代に朴氏の友人の娘の不正入学問題を厳しく追及していたにもかかわらず、自分の娘を高麗大学へ不正入学させていたのではないかという疑惑が浮上しており、野党の自由韓国党やマスコミから連日追及を受けている。それにも関わらず、文大統領は自らが掲げる検察改革の実現にチョ氏の手腕は欠かせないと考え任命を強行するようである。

仮にチョ氏が法相に就任した場合には、韓国政治における保革対立がより先鋭化する一方で、文大統領への支持率にも影響が及ぶことが予想される。そうした場合には、文政権はこれまでの政権同様に点数稼ぎの手っ取り早い手段として日本に対してさらに強硬な態度を取る可能性がある。

香港

香港では、同地で身柄が拘束された容疑者の身柄を中国本土へ移送することを可能にする「逃亡犯条例改正案」が抗議活動の高まりを受けて正式に撤回された。しかしながらこれで抗議活動が収束するとは思えない。何故ならば、香港政府は中国本土の習近平政権の影響下にあり、中途半端な形で抗議活動を停止すれば習近平政権が今後言論の自由に対する締め付けを強めることが予想されるからである。

抗議活動家らは(1)逃亡犯条例の完全撤回、(2)抗議活動を「暴動」とする見解の撤廃、(3)デモ参加者の逮捕・起訴の中止、(4)警察による虐待と暴力の責任追及と外部調査実施、(5)民主的選挙の実施という「5大要求」を掲げており、残りの4つが実現するまで抗議活動は停止しないと宣言している。事態は習近平政権と香港の民主派市民との間のチキンレースの様相を呈しており、短期間で鎮静化すると考える識者は少ないように思える。

イギリス

ボリス・ジョンソン氏は、10月31日までのEUからの離脱を掲げて保守党党首選に勝利し首相に就任したが、政権は早くもレームダック化しつつある。これまでメイ保守党政権は「実質的には」少数政権だったが、先日、保守党から20名以上の議員が去ったためにジョンソン政権は就任から1ヶ月もたたずに完全な少数政権となった。

事の始まりは、10月31日のEU離脱期限まで議会(下院)で野党から激しい追及を受けることを嫌ったジョンソン首相が9月12日から10月14日まで強引に議会を閉会させる決定をしたことにある。これに対して労働党を中心とした野党は、9月3日から9日までの議会開催中に「合意なき離脱」を阻止させる法案を提出、これに21名の保守党所属議員も賛同し同法案は下院で可決された。ジョンソン氏側は、野党案に賛同した議員に対し党議拘束を破ったとして保守党から除名したが、このことによりジョンソン政権は完全に少数政権になったのである。

ジョンソン政権が下院で過半数を握るためには、現在の議席数やその他の状況から考えれば野党第一党の労働党と大連立を組むか解散総選挙に打って出て保守党が過半数を獲得するしかない。しかし、前者に関しては労働党が政権参加に応じるのは不可能と言ってよく、後者に関しては下院の任期途中の解散総選挙実施には制限が課されている。任期途中に下院を解散させる方法は二つあり、それは内閣不信任案を可決させること2/3以上の議決で議会が解散に同意することである。現在9月6日現在、保守党はジョンソン政権が発足間もないこともあり、最大野党の労働党に10%近くの差をつけて支持率でリードしており、ジョンソン氏は早期の解散を狙っている。一方で、野党側、特に労働党としてはジョンソン政権を完全にレームダックさせて十分支持率が下がった後でなければ総選挙は避けたい状況にある。

以上から、一気に強硬離脱または総選挙に動くという状況にはなく再び離脱が延期されそうだと見ることもできるが、アメリカのトランプ大統領同様に奇抜な言動で知られるジョンソン氏が首相となっているだけに、予想外の事態が起きることも十分考えられる。

アメリカ

アメリカでは2020年の大統領選に向けて、野党民主党内では来年8月の党大会で大統領候補を決めるための公開討論会が断続的に開催されている。これまで立候補を表明した候補者に関しては、現在は10人に絞り込まれており、ジョー・バイデン前副大統領、 バーニー・サンダース上院議員(バーモント州)、エリザベス・ウォーレン上院議員(マサチューセッツ州)、カマラ・ハリス上院議員(カリフォルニア州)、インディアナ州サウスベント市長のピート・ブータジャッジ氏と支持率が続いている。一部の世論調査によると、これらの5氏に関してはいずれもトランプ大統領との一騎打ちを想定した場合でトランプ氏より高い支持率を得ている。

現時点で関心が高いのはこの中で誰が民主党候補になるのかということであるが、各種世論調査の支持率平均は、バイデン氏が30%前後、サンダース氏とウォーレン氏が15-20%であり、4位のハリス氏の7%前後を大きくリードしている。順当に行けば上位3氏のいずれかになると思えるが、中道左派である民主党党内ではバイデン氏は中道寄りである一方でサンダース氏とウォーレン氏は党内的には左派という位置づけになり支持層が被る。こうしたことから、最終的にはサンダース氏とウォーレンのいずれかが降りてバイデン氏と最終的な指名獲得を争うのではないかという意見も聞かれるようになっている。

鈴木しんじ

鈴木しんじ慶應義塾大学SFC研究所上席所員

投稿者プロフィール

1972年生まれ、東京都中野区出身。東京工業大学博士(理学)。
東京外国語大学外国語学部フランス語学科卒、東京工業大学大学院社会理工学研究科博士課程修了。専門は政治経済学、公共経済学。
個人ホームページ https://www.suzuki-shinji.net/

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