外務省が香港に対する危険情報をレベル1から引き上げないのは、もはや不作為の域ではないだろうか。
外務省は8月14日に香港の危険情報を新規に「レベル1」に引き上げた。そこでは「ゲリラ的な抗議活動が行われるなど流動化傾向がみられ,また抗議者と警察当局の衝突がエスカレートしている傾向」とあり、この時点での判断はそれで正しかったように思う。
しかし、事は重大さを増しており、レベル1引き上げの時点から状況は大きく変化した。列挙するだけでも
1、邦人が(外国人と誤認されて)暴行を受ける事態が発生したこと
2、邦人観光客が複数人逮捕されたこと、しかもデモに参加したわけではなく見物していたこと
3、地下鉄などの公共交通機関が運休したり部分的に閉鎖されることが日常茶飯事となっていること
4、中国外務省が「香港は危険である」旨を表明し、教育機関を一時的に閉鎖することになったこと
5、暴動は過激さを増しており、警察当局は実弾射撃を警告した上で実際に実弾を射撃する銃を携帯していること
6、これまでに暴動で2名の死者が出ているほか、多数の負傷者や逮捕者が出ていること
と状況は変化している。
レベル1とは、「その国・地域への渡航,滞在に当たって危険を避けていただくため特別な注意が必要です。」と定義されており、特に渡航を延期したり中止したり帰国することを推奨するものではない。レベル2になると、「その国・地域への不要不急の渡航は止めてください。渡航する場合には特別な注意を払うとともに,十分な安全対策をとってください。」と変わるので、観光客の渡航など不要不急の訪問は確実に減るだろう。旅行代理店などもレベル2になると旅行自体を取りやめるケースが多いと聞く。
つまり、この海外渡航情報をレベル2やレベル3に引き上げることは、日本政府として香港から邦人を引き揚げるよう勧告するようなものであり、中国政府に対して「香港は危険であり、邦人に引き揚げを勧告するレベル」というメッセージを送ることになる。当然、これは香港における経済活動にもマイナスの影響を与えることになるため、日中韓首脳会談(12月24日、成都)を控えているこのタイミングで危険情報を上げることは考えにくい。
特に、安倍首相は日韓関係にシビアだ。2018年9月以来となる会談では、元徴用工問題やGSOMIA破棄その他様々な外交問題を抱えており、日韓関係の改善が進むかどうかが大きな問題だ。その状況において、日中の関係性も悪くすることは外交的にマイナスが大きいだろう。そのため、現時点では日中関係より日韓関係を重視するために、この香港問題には目を瞑る可能性が高いのではと考えている。
しかし、外交問題より邦人保護が第一ではないだろうか。香港の現場は警察が自らをコントロールできない状態になっており、米国をはじめ諸外国もこの状態を憂慮している。また、これまで香港は邦人にとってとても人気な観光地の一つであり、邦人の現地安全への期待度が著しく高い場所でもある。従って、香港の現場と邦人の安全意識との間に大きな乖離があることは明らかであり、これ以上、邦人が事件事故に巻き込まれない予防のためにも、「レベル2」への引き上げ実施に躊躇してはならないだろう。これ以上危険情報を引き上げないで邦人に万が一のことがあるようでは、不作為を疑われてもおかしくないだろう。
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