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選挙コンサルから見た、電車内でタスキを着ける候補者の違法性

参議院議員期間中、たすきをつけて電車に乗る行為が問題ではないかと、インターネット上で話題になっている。具体的には、公職選挙法や鉄道営業法に違反するのではないか、との指摘が相次いでいるようだ。実際のところ、違法性はあるのだろうか。それぞれの条文から検証をしてみた。

まず、鉄道用地や電車内における選挙運動の規制については、公職選挙法第百六十六条には、次のように記載されている。

公職選挙法第百六十六条 何人も、次に掲げる建物又は施設においては、いかなる名義をもつてするを問わず、選挙運動のためにする演説及び連呼行為を行うことができない。ただし、第一号に掲げる建物において第百六十一条の規定による個人演説会、政党演説会又は政党等演説会を開催する場合は、この限りでない。
一  国又は地方公共団体の所有し又は管理する建物(公営住宅を除く。)
二  汽車、電車、乗合自動車、船舶(第百四十一条第一項から第三項までの船舶を除く。)及び停車場その他鉄道地内
三  病院、診療所その他の療養施設

この条文で制限をされていることは、「いかなる名義をもつてするを問わず、選挙運動のためにする演説及び連呼行為を行うこと」とされており、演説や連呼行為を行うことは出来ないが、それ以外の選挙運動については問題がないとされている。すなわち、候補者が自らの氏名を記載されたタスキを着用することは選挙運動だが、着用するだけであっては演説ならびに連呼行為には当然該当しないために、当該条文をもって違法とは解釈できないだろう。

また、鉄道営業法には、下記の条文が存在する。

鉄道営業法第三十五条 鉄道係員ノ許諾ヲ受ケスシテ車内、停車場其ノ他鉄道地内ニ於テ旅客又ハ公衆ニ対シ寄附ヲ請ヒ、物品ノ購買ヲ求メ、物品ヲ配付シ其ノ他演説勧誘等ノ所為ヲ為シタル者ハ科料ニ処ス

ここでは、車内や停車場などの鉄道用地において旅客や公衆に対して、寄附を集めたり、物品の購買を求めたり、物品を配布しその他演説勧誘などを行った場合、科料になると記載されている。この条文だけを見た場合、たすきを着用しているだけであれば、そのいずれにも該当しないため、本条文をもって違法とは解釈できないだろう。

となると、実際のところ、公職選挙法違反との指摘や、鉄道営業法に違反するという指摘は、実際のところ成立しないようだ。では、電車の中では何をやっても良いのだろうか。

例えば、ビラの配布は認められない可能性が高いだろう。鉄道営業法においては、物品を配布することは認められていないことは一目瞭然だ。また、新聞折込その他選挙事務所・演説会・街頭演説の場においては、選挙運動用ビラを配布して良いことになっているが、これは逆を介せば、新聞折り込みではなく、選挙事務所でもない電車内などで配布したとするならば、それは演説会もしくは街頭演説の場となると見做されるだろう。(街頭演説用標旗を掲げれば、当然違反になるということだ)

このあたりを十分に承知した上で、選挙候補者の移動手段についても考える必要がありそうだ。特に東京や大阪など大都市圏では、電車での移動の方が確実に時間通りに移動できるという意味では、大きな意味を持つこともある。通行量もあることから、一つの戦略として今後も使われていくだろうが、条文に沿った合法的な手法が広がっていって欲しい。

大濱﨑 卓真

大濱﨑 卓真ジャッグジャパン株式会社 代表取締役社長

投稿者プロフィール

1988年生まれ、三鷹育ち。青山学院高等部卒業、青山学院大学中退。国会議員秘書、システム開発会社でのサラリーマンを経て、2010年独立。東日本大震災の際には、帰宅困難者向けに避難所を地図にした Google Maps「東京都内避難場所」を震災発生直後にリリースし話題に。現在は、選挙コンサルタント、自由報道協会記者という立場のほか、教育系会社取締役など、複数の法人役員を兼務している。

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