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「羽田アクセス線」「都心直結線」…首都圏の鉄道網はどうなる?

国土交通省の交通政策審議会は7日、「東京圏における今後の都市鉄道のあり方に関する小委員会」による会合を開き、2030年までの首都圏の鉄道網構想の答申案を公表した。各鉄道プロジェクトの選考においては、訪日外国人の増加や、2020年開催の東京オリンピック・パラリンピックへ向けて、また、空港アクセスの利便性における問題点など、近日の都市鉄道に係る現状認識を踏まえた上で検討がなされている。

下記が答申案の中で提示された、計24のプロジェクトである。今回は「国際競争力の強化に資する鉄道ネットワークのプロジェクト」を中心に、詳細を取り上げていく。

国土交通省(2016)「資料2:東京圏における今後の都市鉄道のあり方 について (案)」

国土交通省(2016)「資料2:東京圏における今後の都市鉄道のあり方 について (案)」(クリックで拡大)

 

「国際競争力の強化に資する鉄道ネットワークのプロジェクト」

<1>「都心直結線」の新設(押上~新東京~泉岳寺)
成田空港と羽田空港を1時間弱で結ぶ予定の新設ルート。深さ11kmの地下に新線を敷設するプランとなっている。新東京駅(新設)から羽田空港へは18分、成田空港へは36分で結ばれる予定。

<2>「羽田空港アクセス線」の新設および京葉線・りんかい線の相互直通運転化
(田町駅付近・大井町駅付近・東京テレポート~東京貨物ターミナル付近~羽田空港、新木場)

田町駅経由が「東山手ルート」、大井町駅経由が「西山手ルート」、新木場経由が「臨海部ルート」と呼ばれ、これらの3つのルートが新設予定の東京貨物ターミナル駅を経由してそのまま羽田空港へ向かう予定となっている。

<3>「新空港線(蒲蒲線)」の新設(矢口渡~蒲田~京急蒲田~大鳥居)
現在離れた位置にあるJR蒲田駅と京急蒲田駅を結ぶ地下鉄を作り、大田区の主に東西方向の路線網を整備する目的で計画されていたが、後に羽田空港アクセス路線の意味合いを持たせたプランとなっている。

<4>京急空港線 羽田空港ターミナル駅引き上げ線の新設
目的は輸送力の向上。折り返し運転の準備を引き上げ線で行えば、速やかにホームを空けて次の列車を迎え入れることができる。そのため列車の運転本数を増やすことが可能である。
<5>常磐新線の延伸(秋葉原~東京(新東京))
「常磐新線」とは、現在秋葉原~つくば間を結んでいる「つくばエクスプレス(TX)」の別名称である。また、「新東京駅」は、現在の東京駅の近くに新設予定の新駅。

<6>「都心部・臨海地域地下鉄構想」の新設および同構想と常磐新線延伸の一体整備
(臨海部~銀座~東京)

臨海部において急増する交通需要への対応、都心部と臨海部の間の所要時間の短縮、臨海部における鉄道不便地域の解消、都心部・臨海部における既存駅の容量不足への対応、などを目的に計画されている。今のところ、中央区の域を出る予定はない。

<7>東京8号線(有楽町線)の延伸(豊住線)(豊洲~住吉)
有楽町線を豊洲で分岐して延伸し、住吉に至る路線。さらに葛飾まで延ばす計画もある。目的として、東京東部や千葉西部から東京臨海副都心へのアクセス向上、総武緩行線や東西線の混雑緩和、臨海副都心と東京スカイツリー、東京ディズニーリゾートを結ぶ観光回遊ネットワークの形成、輸送障害時の代替ルート等が挙げられている。

<8>「都心部・品川地下鉄構想(品川線)」の新設(白金高輪~品川)
都心と品川駅を結ぶ路線として赤坂、六本木方面からの乗り入れを想定しており、南北線の白金高輪駅などからの延伸が有力視されている。

 

鉄道網の課題意識と、今後の進捗

上記、プロジェクトの内訳を見ていくと分かるように、首都圏の鉄道網の問題意識として「都心部から成田・羽田各空港へのアクセス・輸送量改善」「成田・羽田空港間のアクセス改善」「延伸と乗り換え利便性向上による、回遊性の向上」「既存の鉄道路線のない地点同士を結ぶことによる利便性向上」などが意識されているのではないだろうか。また、東京メトロは東京13号線(副都心線)を「(民営化後、最初で)最後の新規開業地下鉄」としており、地下鉄の新規開業については腰が重いとの見方が大半。プロジェクトとして取り上げられた延伸や新駅の開業がどれほど計画に沿って進んでいくかは未知数だと言える。

 


(参考)

「地域の成長に応じた鉄道ネットワークの充実に資するプロジェクト」

<9>東西交通大宮ルートの新設 (大宮~さいたま新都心~浦和美園(中量軌道システム))
<10>埼玉高速鉄道線の延伸 (浦和美園~岩槻~蓮田)
<11>東京12号線(大江戸線)の延伸 (光が丘~大泉学園町~東所沢)
<12>多摩都市モノレールの延伸 (上北台~箱根ヶ崎、多摩センター~八王子、多摩センター~町田)
<13>東京8号線の延伸 (押上~野田市)
<14>東京11号線の延伸 (押上~四ツ木~松戸)
<15>総武線・京葉線接続新線の新設 (新木場~市川塩浜付近~津田沼)
<16>京葉線の中央線方面延伸及び中央線の複々線化 (東京~三鷹~立川)
<17>京王線の複々線化 (笹塚~調布)
<18>区部周辺部環状公共交通の新設 (葛西臨海公園~赤羽~田園調布)
<19>東海道貨物支線貨客併用化及び川崎アプローチ線の新設 (品川・東京テレポート~浜川崎~桜木町、浜川崎~川崎新町~川崎)
<20>小田急小田原線の複々線化及び小田急多摩線の延伸(登戸~新百合ヶ丘、唐木田~相模原~上溝)
<21>東急田園都市線の複々線化 (溝の口~鷺沼)
<22>横浜3号線の延伸 (あざみ野~新百合ヶ丘)
<23>横浜環状鉄道の新設 (日吉~鶴見、中山~二俣川~東戸塚~上大岡~根岸~元町・中華街)
<24>いずみ野線の延伸 (湘南台~倉見)

宇田川 藍

宇田川 藍ジャッグジャパン株式会社

投稿者プロフィール

1989年生まれ。幼いころ体験したユビキタス技術に興味をもち、大学では空間情報学を専攻(青山学院大学総合文化政策学部)。地理情報システム(GIS)を用いたエリアマーケティングの手法やオープンデータの利活用を、大手企業から政治の分野にまで幅広く提案している。
アート、ハイテク、街歩きが好き。

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