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「募った寄付金は学費へ充当」と明言――みちのく応援奨学金

2011年11月、未曾有の被害をもたらした東日本大震災から半年を過ぎた頃、大手食品会社が協同*1で「みちのく未来基金」という財団法人を起ち上げた。みちのく未来基金とは、分かりやすくいえば「震災遺児を対象とした、返済義務のない奨学金制度の運営団体」であり、年間300万円を上限として、両親もしくはどちらかの親を震災によって亡くした子供たちに対して、大学・短大・専門学校などの学費が卒業まで給付される「みちのく応援奨学金」などを運営している。その年数としても、「震災時にお腹の中にいた子供たちが、進学先を卒業するまで(約25年間)」と設定されており、2040年近くまで支援を続けていく見通しだという。
(*1 ロート製薬株式会社、カルビー株式会社、カゴメ株式会社の3社。後に趣旨に賛同したエバラ食品工業株式会社が参画)

設立の思い

「公益財団法人 みちのく未来基金」の公式サイトでは、設立趣意や基金の特徴について知ることが出来る。その趣旨の中で、重要なメッセージだと思える箇所を下記に引用する。

(略)建物や道路が再建されようとも、その地に住む者がいなくなり、新しく育つ者がいなくなれば、それは地域の復興とは程遠い事になる事を目の当たりにし、今回の震災において同様の事を繰り返させてはなりません。今回も多くの子供達がご両親、もしくは片親を亡くされました。阪神大震災においても、遺児達は、その経済的な側面からも、夢や希望を早期に諦めたり、故郷を離れるといった傾向が顕著でした。彼らに安心して夢を追い続けてもらう事、これこそ復興には欠かせないキーワードではないでしょうか。(略)

この言葉に見え隠れする、時間をかければ戻ってくる(戻せる)ものと、もう二度と戻ってこないものの断絶。我々も、無意識のうちに復興の進捗を目に見える形で計ろうとしていないだろうか。

みちのく未来基金のポリシー

同公式サイトには、「奨学金設計ポリシー」と「基金運営ポリシー」の2本柱で本基金の特徴をまとめている資料がある。下記にその一部を引用する。

1)東日本大震災の遺児全てが対象 → 人数制限や選考(選別)はなし*2
2)生徒の夢に応じた支援 → 一律の給付ではなく”必要額”を支援
3)給付金のご意思を反映 → 給付全額を生徒の学費に充当できます
4)透明性の確保 → 基金のお金の使い道全てHPで公開
(*2 ※事前エントリーは必須

2016年に行われた報告会より

設立から4年が経過した本年3月10日には、4社合同で記者会見を行い、これまでとこれからの活動について発表した。代表理事の長沼孝義氏は、活動報告内において「設立から4年で約400名の子供たちに奨学金を給付したこと」や、「設立当初は奨学金の給付が目的だったものの、今は子供たちに寄り添い、『声』を聴き、子供たちの交流の場をつくることが目的となっている」「これから先20数年も、私たちは遺児たちの進学の夢を支援し続けます」と語った。

筆者末筆

支援の概要や目的が明確で、かつ上場企業らが協同で運営することによる持続可能性、は非常に魅力的だと思う。企業経営(組織づくり、運営方法)のノウハウがまさに社会貢献へ活きる形でもあり、ノブレス・オブリージュの言葉が頭をよぎる。また、本基金の代表理事である長沼氏は元々カルビー株式会社で上級副社長執行役だったが、このみちのく未来基金での活動のためにカルビー社を退職されたとのこと。そして2011年3月11日はカルビー社にとっても忘れられない日である。なんと東証一部上場を果たしたまさにその日であり、震災時刻は記者会見の最中であったという。その後、2011年4月にロート製薬社の山田氏から提案があり、5月にカルビー社、6月にはカゴメ社の賛同があり8月10日に稟議が決定したということだ。
これからも本基金の活動、活躍に注目していきたい。

(寄付方法について)

公式サイト内の該当ページを参照されたし。
http://michinoku-mirai.org/support/kifu-top.html

宇田川 藍

宇田川 藍ジャッグジャパン株式会社

投稿者プロフィール

1989年生まれ。幼いころ体験したユビキタス技術に興味をもち、大学では空間情報学を専攻(青山学院大学総合文化政策学部)。地理情報システム(GIS)を用いたエリアマーケティングの手法やオープンデータの利活用を、大手企業から政治の分野にまで幅広く提案している。
アート、ハイテク、街歩きが好き。

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