韓国
日本政府は8月2日、韓国を輸出管理の優遇措置を受けられる「ホワイト国」から正式に除外する政令改正を閣議決定で行った。予想通り韓国では激しい反発が起きており、文在寅大統領は「日本経済が私たちより優位にあるのは経済規模と内需市場で、南北間の経済協力で平和経済が実現されるなら私たちは一気に(日本に)追いつくことができる」とまで述べ、日本との関係改善よりも北朝鮮との関係改善を重視する姿勢を鮮明にした。
これに対して日本政府は8日、輸出手続きを厳格化した材料3品目のうち1品目について、通常申請から許可が出るまでの3分の1林鄭月娥程度の期間で許可を出した。今回の日本政府の対応は韓国側の反発を抑えることを目的としたものだとの憶測を呼んでいる。またソウル市中区の徐良鎬(ソ・ヤンホ)区長は、同区の1100か所以上に「BOYCOTT JAPAN」と書かれた旗を掲げようとしたが、市民からの反対が強く撤回に追い込まれた。しかしながら、こうした動きが事態の鎮静化につながる保証はない。事態の鎮静化には、日韓双方の政治家が相手の国を叩くことによって自身への支持を高めようとするポピュリズム的言動を慎むことが不可欠であろう。
アメリカ
アメリカでは銃の乱射事件が相次ぎ、テキサス州とオハイオ州で先週末起きた2件の銃乱射事件では合計29人が死亡、数十人が負傷した。特にテキサス州エル・パソにおける事件は人種差別に絡むヘイトクライムとみられており、野党民主党の大統領選候補者は皆トランプ大統領が人種間憎悪を煽っていると非難した。しかしながら、トランプ氏は移民の流入を「侵略」と敵視することが自身を支持する白人保守層からの支持を固め、それが2020年の大統領選挙での再選に寄与すると考えているようであり、言動を変えることはないであろう。
対外的には米中貿易戦争とイランと対立も懸念事項である。米中貿易戦争は収束することなくエスカレートし、中国政府が人民元の大幅な下落を容認するなど通貨戦争の様相も呈してきた。米中貿易戦争が世界的な景気後退をもたらしつつあるとの見方も広まりつつある。イラン問題に関しては、トランプ政権は日本を含む同盟国に対してペルシャ湾周辺の戦略的海域を航行する民間船舶の安全確保を目的とする「有志連合」に加わるように求めている。現在のところこれに前向きなのは、「イギリスのトランプ」と揶揄されるボリス・ジョンソン氏に首相が交代したイギリスと安全保障で日本よりも米国に依存する韓国のみである。米国、イランとも友好関係にある日本は対応に苦慮しているが、安易な参加表明は今後の日本とイスラム社会との間に禍根を残しかねない。
いずれにせよ、2020年の大統領選での再選を目指すトランプ大統領は、民主党大統領候補予備選が始まって以来、支持者を扇動すべく過激な言動をさらにエスカレートしているのが懸念される。
香港
香港では、同地で身柄が拘束された容疑者の身柄を中国本土へ移送することを可能にする「逃亡犯条例改正案」への抗議活動が開始されてから2か月以上が経過したが、事態が鎮静化する見通しはない。デモ参加者と警察が衝突を繰り返してきており、抗議活動の目的も中国政府への批判に代わりつつあることからデモ隊の行動も先鋭化してきている。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、中国政府で香港問題を担当する香港マカオ事務弁公室の張暁明主任は「状況がさらに悪化し、香港政府が制御できないような混乱に陥れば、中央政府は絶対に静観できない」と述べ、中国政府の直接的介入を警告した。香港政府の林鄭月娥行政長官が事態を収拾できる見込みもなく、対立が激化すれば中国政府が人民解放軍を派遣し鎮圧に乗り出す可能性もゼロとは言えない。
イギリス
メイ首相の後継を選ぶ保守党の党首選は、EUからの強硬離脱派として知られるボリス・ジョンソン前外相が勝利し、エリザベス女王からの指名を受けて首相に就任した。ジョンソン氏は、これまでの言動から「風見鶏」、「道化師」、「差別主義者」、「イギリスのトランプ」など多くの批判を受け、政治家としての資質に疑問符が投げかけられてきた。一方でエリートでありながら、ボサボサの金髪頭、ぽっちゃりした体形、スーツの上にリュックサックを背負いながら自転車で通勤するという庶民派な振る舞いからどこか「憎めない」キャラを有しており、大衆的な人気を保ちつづけてきたのも事実である。もともとEU離脱派ではなく注目を浴び権力を得るために離脱派の中心人物になったので、彼は単なるポピュリストであり信念がない政治家と評価される傾向がある。
現在、与党保守党と閣外協力関係にある民主統一党の議席合計は下院の過半数をわずかに1上回るのみであり、野党労働党が不信任案を提出した場合、保守党内のEU残留派議員がそれに賛成すれば可決される可能性が高い。ジョンソン首相はEUから合意なしに離脱するシナリオ中心に据えており、離脱協定案を再交渉する意志はないと言われているが、10月31日のEU離脱期限近づくにつれ波乱が待ち構えていることは間違いないだろう。
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