5月25日から28日までアメリカのトランプ大統領が国賓として来日し、安倍首相との首脳会談、新天皇との初会見、宮中晩さん会を行ったほか、安倍首相とのゴルフや大相撲観戦を行った。今回の訪日では両首脳の個人的な親密さがにアピールされ、日本政府は「接待外交」と揶揄されるほどの過剰な待遇でもてなしたが、共同声明などの成果文書は出されず貿易交渉や北朝鮮問題では日米両首脳の立場の違いが浮き彫りになる場面もあった。しかしながら、政権周辺からは「盤石な日米同盟」が盛んに宣伝されていることからわかるように日米関係はおおむね良好と言える。
米国は他国との関係においては相変わらず緊張が続いており、イランとの関係は緊迫する一方であり、米中の貿易摩擦については報復関税合戦が止まらず、メキシコに関してもトランプ大統領は不法移民への対応不足を理由に輸入品にすべてに最大25%の報復関税措置を行うことを発表した。このように諸外国との緊張を高める政治姿勢はこれまでのトランプ大統領の言動からすれば既定路線と言えるが、米中貿易摩擦に関しては米中の覇権争いの側面が強いことに注意すべきである。しかしながら、米中貿易戦争は両国の景気の減速をもたらしかねず、その結果日本を含め世界経済の低迷をもたらす危険性があることは言うまでもない。
次に、欧州政治であるが、5月23日から26日まで行われた欧州議会選挙の結果については、最大勢力の中道右派とそれに次ぐ中道左派が退潮し、極右および環境リベラル派が躍進したと言われている。中道右派の欧州人民党は217議席から180議席へ、中道左派の社会民主進歩同盟も187議席から146議席にそれぞれ議席を減らし、両勢力の合計は過半数を下回った。いわゆる反EU的な「極右」とされる勢力に関しては、イギリスの「ブレクジット党」、フランスの「国民連合」、イタリアの「同盟」が勢力を拡大したのは間違いないが、ドイツの「ドイツのための選択肢」とスペインの「VOX」は直近の国政総選挙より得票率を減らした。欧州懐疑派とされる勢力は全体としては前回の206議席を4議席上回った210議席を獲得したにとどまり、定数751の1/3にすら届いておらず、右派勢力全体に関しても伸び悩んだという見方ができよう。一方で、親EUの中道派およびリベラル派である欧州自由民主同盟と環境保護派の欧州緑グループ・欧州自由連盟は議席を大幅に増やし、親EU勢力は全体の約2/3を引き続き確保した。
今回の選挙においては、これまで各国で二大政党として君臨していた中道右派政党と中道左派政党の票の多くが中道派・リベラル派・環境保護派に流れたと言える。欧州議会議員選挙で採用されている比例代表制は多党制をもたらす傾向にあり、今回の選挙で一層議会構成の細分化が進んだと解釈できる。
今回の欧州議会議員選挙の結果は、辞任を発表したイギリスのメイ首相の後継者を選ぶ保守党党首選に少なからず影響を与えるだろう。既に10人が立候補しているが、現在のところ最も有力な候補者がEUからの強硬離脱派の筆頭格であるボリス・ジョンソン前外相である。今回の欧州議会議員選挙でブレクジット党がイギリス国内で最多の得票率を得たことから、ジョンソン氏などの強硬離脱派には追い風になりそうだ。ジョンソン氏は自分が首相になった場合EUとの合意の有無に関わらず10月31日には離脱すると宣言しているが、議会では強硬離脱派は少数である。ジョンソン首相が誕生した場合は、合意なき離脱が本当に実現できるのかそして保守党は分裂するのかが焦点となるであろう。
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