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大学生の授業料は誰が払うべきもの?

日本の大学生への奨学金には返還の義務のない給付型の公的奨学金制度がないうえ、貸与型には金利がつき卒業後の返済が大きな負担になっていることが問題として取り上げられています。

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大学生が支払う学費には各国によって極端な開きがあります。日本の大学生は入学時に国立大学の場合、817,800円、公立大学は平均935,578円、私立大学の平均では、1,312,590円を大学に支払っています。ところが、ドイツでは学生から学費をとる大学はありませんし、フランスの国立大学も授業料、入学料は必要ありません。イギリスとアメリカでは、授業料を払うのは一般的ですが、入学料はありません。

OECD加盟30カ国中26カ国が高校の授業料が無償であり大学は14カ国が無償です。有償の国でもほとんどが公的な給付型奨学金があります。実は、高校にも大学にも授業料があり、公的な給付型奨学金もないのは、日本を含めて2カ国しかありません。このように日本の高等教育にかかる費用は諸外国に比べてかなり高額になっているのです。
なぜ、諸外国では大学教育の無償化が進んでいるのでしょう。教育を受けることは基本的人権であり、教育機会の平等を図るため学費はできるだけ無償ににすべきだという考え方を否定する人はいないでしょう。実際、日本でも小学校と中学校は授業料は無償と定められています。多くの国ではこの考え方を大学の教育まで適用しているだけと考えられます。国際人権規約(1966年に国連総会で採択)にも、“高校・大学は段階的に無償にする”と明記されています。
また、教育によって利益をえるのは学生本人だけではなく社会全体であるという視点もあります。例えば高等教育を受けている人の方が健康で、社会全体の医療コストが削減される、就業率が高いので失業給付が抑制できる、などです。国立教育政策研究所の試算では、高等教育(大学以上)への公的な支出は、将来2.4倍の額の公的な便益が得られるとしています。つまり、高等教育への公的な支出は社会の安定度を増すだけでなく、経済的にみても十分割にあう投資だという考え方が成り立ちます。

学生一人あたりの高等教育への公的負担額を対一人あたりGDP比率でみた場合、OECD加盟諸国の平均が37.6%であるのに対して、日本は26.2%にすぎません。日本ではいま急速に格差が広まってきています。格差社会の最も恐ろしい点は、低所得者層の人々が教育に十分投資できないことによって、階層が固定化してしまうことです。大学の学費は受益者負担といっていいと思いますが、決して本人だけが受益者ではなく社会全体がその恩恵を受けるのです。

本格的な格差社会突入を阻止し、社会を健全化するために日本は大学教育への公的な支援を拡大すべきです。

寺島義人

寺島義人ジャッグジャパン株式会社 政策アドバイザー

投稿者プロフィール

すべての人が自分らしく自由に生きていける社会をつくることを人生の目的にしています。世の中からあらゆる差別、不合理、不条理をなくすために、政策提言活動と市民活動を続けています。

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