東日本大震災の避難所で「一番困ったこと」
- 2016/3/19
- 特集記事
先日、地元の防災訓練に参加してきました。東日本大震災から5年の節目をむかえ、もう一度災害に対する備えを再確認しようという活動が活発化している様です。この防災訓練というものも、東日本大震災からそのあり方が変わってしまったものの典型例かもしれません。半日をかけた訓練では、避難器具の組み立て訓練など実践的で、また指導にあたった消防署員への真剣な質問も多く、災害が現実の想定の範囲内に入ってきてしまったことを否応なく感じさせました。
東日本大震災に関するある調査研究によると、避難所での生活で「問題があった施設」は何か、との質問で回答数が最も多かったのが「トイレ」でした。暖房設備、上下水道、発電、食料備蓄などの生命を直接支える施設よりもトイレが問題だと指摘した人の方が多いという事実には注目が必要です。災害時の避難所は多くは小中学校です。国立教育政策研究所の調査では全国の小中学校の95%以上が避難所として指定されているとのことです。もはや小学校、中学校は教育施設としてだけではなく地域の防災拠点としての整備も義務付けられていると言って過言ではありません。
小中学校のトイレの何が問題なのでしょう。専門家からの意見として多いのは洋式化です。和式では高齢者と障害者の方々の利用は非常に困難です。地域の方々が一定期間すまなければならない避難所ですが、そのトイレを使えない方々がそこに居住しなければならないことは、当人だけでなく介助者にとって実に重大な問題です。地域によっては、和式を知らない外国人の方も避難所に来る地域もあるでしょう。
災害対策関係者や学校関係者のあいだでは、このような知見は共有されていますが、多くの自治体では財政難を主な理由として整備がなかなか進んでいません。喫緊の課題ではないという判断です。小学校の洋式化完了率は、全国の小学校でわずか18%程度との報告もあります。
私達の想像力には限界があります。自分には思ってもいなかったことでも、和式トイレによって避難所の生活が苦難だと感じる方々が現に大勢いた事実は率直に受けいれて、洋式化を推進していくべきです。
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