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小西ダイブと山本太郎焼香パフォーマンスは法的処罰を受けるか

参議院における我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案(いわゆる「安保法案」)は100時間を超える審議の上、17日夜、我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会で採決、可決した。野党が強行採決と主張するこの採決では、小西洋之議員(民主党)が採決時に、鴻池特別委員会委員長の座席後ろからダイブをするなど、非常に危険なシーンがテレビで放映されるなど、緊迫した様子が伝えられた。翌18日には、参議院本会議において生活の党と山本太郎となかまたちの山本太郎共同代表が、安倍晋三首相の問責決議案の記名投票において、記名投票に際して議場内を非常にゆっくり歩くいわゆる「牛歩」戦術で議事進行を遅らせた。議長に投票時間の制限をされた結果、最終的には投票したものの、投票直前には与党席に向けて焼香のしぐさを見せるパフォーマンスを行った。

なお、小西議員は当該行為について次のようにツイートしている。

本項執筆時点では衆議院における内閣不信任決議案の採決が行われており、未だ安保法案は可決成立していないものの、時間の問題と思われる。しかしながら、野党は時間稼ぎのための動議提出を複数行っており、成立が18日中に行われるかは依然不透明な状況だ。その中でも、参議院我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会における小西洋之議員のダイブ(ネット上では「小西ダイブ」と揶揄されている)や、山本太郎議員による牛歩戦術ならびに焼香パフォーマンスがモラルや風紀の問題から多くの指摘を受けているようだ。これらのパフォーマンスは議事進行をいたずらに遅らせるだけではなく、小西ダイブに至っては相手方に怪我を与えかねない内容のため、非常にゆゆしき問題だと与党側は捉えている。これらの行為は処罰を受ける可能性はあるのだろうか。

そもそも日本国憲法第50条では、「両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。」と定められている。ここでいう法律の定める場合とは国会法第33条を指し、「各議院の議員は、院外における現行犯罪の場合を除いては、会期中その院の許諾がなければ逮捕されない。」とされている。すなわち、国会議員は「国会外」かつ「現行犯」でない限りは、その所属する院の許諾が無ければ逮捕できないのだ。今回の小西洋之議員による委員長席へのダイブは、参議院第一委員会室で発生しているため、当然国会内の出来事だ。このため、これを理由に逮捕することは原則できない。基本的に国会会期中は国会議員は議院警察権の下にあるものと解されており、すなわちその議会の議長による命令がない限りは現行犯であっても拘束できないとされている。仮に議長が命じた場合には、衛視執行といって、衛視が強制的に排除することができるとされている。具体的には平成4年に中西啓介衆議院議院運営委員長の解任決議案に対し、議長の再三の制限時間オーバーの指摘を無視した結果、発言中止命令と降壇命令が出た挙げ句、最終的には議長によって「執行を命じます」と宣言され、衛視に抱えられて降壇されたという記録が残っています。こういった行為もできなくはなかったと思われますが、人数的に非常に多かったことや、具体的な命令が出せる状況下ではなかったことから、衛視執行はされなかったものと考えられる。

山本太郎議員による牛歩戦術と焼香パフォーマンスはどうだろうか。牛歩戦術は以前は野党の対抗措置として使われていたことも多い戦術だったが、現在では使われることの少ない戦術だ。牛歩戦術は本来の目的として時間伸ばしが目的だが、そのゴールを国会会期末まで行うことか、それとも閉鎖された議場から退出する議員を増やすことで定足数を満たさなくする、もしくは出席議員を減らし採決の結果を変えることを目的とすることが多い。しかしながら、今回もしかり、議長が投票時間を制限することによって、これらの戦術は無効化されるというのが一般的な与党側の対抗手段となった。牛歩戦術自体はこのように以前から存在する手法であり、この行為自体で議員個人が処罰を受けた例は少ない。

それでは懲罰はどうか。実は今回、小西議員も山本議員も懲罰動議がかからないことを狙ってこのパフォーマンスを行った可能性が高い。国会法121条3項では、「議員は、衆議院においては四十人以上、参議院においては二十人以上の賛成で懲罰の動議を提出することができる。この動議は、事犯があつた日から三日以内にこれを提出しなければならない。」と定められており、参議院で起きた事案については、20人以上の賛成で3日以内に提出しなければならない。(議長が懲罰を命ずる場合など、各院規則に別の定めはある)小西議員の「小西ダイブ」は17日午後、山本議員の「焼香パフォーマンス」は18日午後に行われたが、いずれも3日以内となると(平日であれば)18日中となる。この場合、懲罰動議を提出した場合、もしくは議長が懲罰措置を行った場合は、これを懲罰委員会に付し審査させる必要が出てくる。そうすると懲罰委員会では事犯が懲罰に相当するか否かを審査することになり、その後に懲罰委員長により本会議へ報告されたのち本会議での議決となる。こうなると、野党が考える時間稼ぎがうまくいってしまうという計算だ。

過去には松浪健四郎議員(当時)による永田寿康議員(当時)へのコップ水かけ事件で25日間の登院停止、内山晃議員(当時)による桜田義孝議員への羽交い締め行為での30日間の登院停止など、暴力行為による本会議による懲罰委員会への付託例がある。参議院では非常に少ないケースだが、直近ではアントニオ猪木議員におる北朝鮮への無断渡航が30日間の登院停止となったのが、実に約60年ぶりの懲罰動議可決だ。

いずれにしても国会論争の最終版に来て非常に荒れている中、お茶の間が唖然とするような審議遅延行為、暴力行為ともとらえられる審議進行が行われていることを世論がどう捉えるか。法案可決後の世論の変化なども注目だ。

 

大濱﨑 卓真

大濱﨑 卓真ジャッグジャパン株式会社 代表取締役社長

投稿者プロフィール

1988年生まれ、三鷹育ち。青山学院高等部卒業、青山学院大学中退。国会議員秘書、システム開発会社でのサラリーマンを経て、2010年独立。東日本大震災の際には、帰宅困難者向けに避難所を地図にした Google Maps「東京都内避難場所」を震災発生直後にリリースし話題に。現在は、選挙コンサルタント、自由報道協会記者という立場のほか、教育系会社取締役など、複数の法人役員を兼務している。

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