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[Q&A]政治家から送られてきた年賀状、これってOKなの?

秋らしい天気が続いていますが、最近になって来年の年賀状発売スケジュールが発表されました。年賀状といえば、公職選挙法における「あいさつ状」の規制がよく知られています。公職選挙法第147条の2では、下記のように定められています。

公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。)は、当該選挙区(選挙区がないときは選挙の行われる区域)内にある者に対し、答礼のための自筆によるものを除き、年賀状、寒中見舞状、暑中見舞状その他これらに類するあいさつ状(電報その他これに類するものを含む。)を出してはならない。

このうち、「答礼のための自筆によるものを除き、年賀状、寒中見舞状、暑中見舞状その他これらに類するあいさつ状(電報その他これに類するものを含む。)を出してはならない。」の「自筆」は、専ら候補者が自ら筆記用具などで文面を記載するもので、印刷されているものの一部に添える程度ではNGとされています。年賀状などでは、その文面や署名を印刷し、さらに一言を自筆で添えるケースも多いですが、このやり方では認められないということです。さらに、「答礼のための」とある通り、自らが送りつける年賀状はそのものがこの法律に抵触します。

公職選挙法第147条の2では、「年賀状、寒中見舞状、暑中見舞状その他これらに類するあいさつ状」とされていますが、これには「喪中はがき」のほか、残暑見舞状、クリスマスカードなども含まれると解されています。これらに類するの範囲は法律上の定義がありませんが、一般的には季節の挨拶と解されるものは、この条文に抵触すると考えても良いでしょう。

この条文はあくまで「当該選挙区(選挙区がないときは選挙の行われる区域)内にある者に対し、」という冒頭の範囲指定がある通り、その政治家(現職であれば現職の、公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者であればその者の)選挙区内にある者を範囲としていますから、当該選挙区外に送るものであれば差し支えないとされています。ただし、これは個人法人を問わないとされていますから、例え選挙区外に在住する法人の代表者に挨拶をする目的だとしても、選挙区内の法人宛に年賀状を送ることは、同法に抵触すると考えられます。

「年賀状、寒中見舞状、暑中見舞状」を例示として列挙はされているものの、その文書の性質が「あいさつ状」でなければ、時候の挨拶が含まれていること自体を規制するものではないことも注意が必要です。例えば機関紙や議会報告などで、その送付時期が正月や夏場に重なったために、文言として「明けましておめでとうございます」「謹賀新年」「暑中お見舞い申し上げます」などと記載されていたとしても、その書面が従来から送付されている機関誌や議会報告などとほぼ同一であり、あいさつとしての役割が主従関係における従で小さいものであれば、「あいさつ状」とは見做されない可能性があります。

そもそも法の趣旨としては、公職選挙法第147条の2の規制は、季節の挨拶とかこつけて、選挙区内の有権者に無差別に文書図画を配布することを防止することを目的としています。(選挙区内のすべての住民に年賀状などのあいさつ状を郵送するだけの資力がある者が有利になることを防ぐため)

なお、郵便局から年賀状シーズンに発売される「くじ付き年賀状」を送ることについて、公職選挙法で規制されている寄付行為にあたるという解釈も一部の選挙管理委員会では指摘されています。これは、「くじ付き年賀状」が「その他の財産上の利益」に該当するため、受領者からすると財産上の価値があるものと認められるケースもあるからという論理となります。ただし、これについては選挙管理委員会や総務省で意見が分かれているのも事実です。

大濱﨑 卓真

大濱﨑 卓真ジャッグジャパン株式会社 代表取締役社長

投稿者プロフィール

1988年生まれ、三鷹育ち。青山学院高等部卒業、青山学院大学中退。国会議員秘書、システム開発会社でのサラリーマンを経て、2010年独立。東日本大震災の際には、帰宅困難者向けに避難所を地図にした Google Maps「東京都内避難場所」を震災発生直後にリリースし話題に。現在は、選挙コンサルタント、自由報道協会記者という立場のほか、教育系会社取締役など、複数の法人役員を兼務している。

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