ここ一か月間の諸外国の政治情勢の中で注目すべきは、イギリスのEU離脱が10月末まで延期されたこととスリランカにおける同時多発テロ事件である。
イギリスのEU離脱問題は、合意なき離脱を4月12日までに回避できる見通しが立たなかったために、10月末まで離脱期限を半年以上延期することで当面の決着が図られた。しかしながら、保守党内の強硬離脱派と表向き閣外協力関係にある民主統一党はメイ政権の離脱案に一貫して反対していることから、下院議会内のどの勢力も過半数を掌握できない「ハングパーラメント」状態が続いており、事態を打開できる可能性は依然として低いままである。こうした中、ほとんどの世論調査で保守党の支持率は労働のそれを下回っており、保守党内の離脱強硬派からメイ首相への退陣圧力が強まっている。ただ、野党化している保守党内の強硬離脱派は党内では少数派であり、メイ首相が自ら辞任しない限りは彼らが党内でイニシアティブを握れる可能性が高いとは思えず、今後も英国政治の混乱が収まる気配はない。
次に、4月21日(日)、スリランカにおいて同国最大都市コロンボを中心に教会やホテルで自爆テロとみられる爆発事件が連続して発生、24日現在死者数は321人、負傷者数は500人を超えている。同国政府はイスラム国(IS)が事件に関わったとの見方を示し、国防担当の大臣はニュージーランドのクライストチャーチで起きたオーストラリア出身男性によるモスクでの銃乱射事件に対する報復としてスラム過激派が実行したと議会で証言した。CNNによるとISも系列のアマク通信で犯行声明を発表し、「スリランカの十字軍同盟に属する国民とキリスト教徒を狙った」と犯行声明を発表したとのことである。
仮にISなどの大規模なイスラム過激派組織が犯行に関わっていたとすると、何故ニュージーランドでもオーストラリアではなく遠く離れたスリランカがテロのターゲットに選ばれたのかは疑問が残る。スリランカと言えば、国民の約7割を占めるシンハラ人が中心の政府と少数派民族であるタミル人主体の武装組織「タミル・イーラム解放のトラ」との間で繰り広げられた内戦が有名だが、タミル人の中にはイスラム教徒も一定数存在するものの「タミル・イーラム解放のトラ」自体は世足主義を取っていた。内戦終結以降、シンハラ人、特に彼らの多くを占める仏教徒の一部の間で、他の宗教、特にイスラム教への弾圧を求める団体が台頭しており、それがイスラム教徒の反発を生んでいたとの指摘があるが、それが今回のテロとどれだけ関係があるかは今後の捜査で明らかにされるべきである。
一方で、スリランカがテロに選ばれた理由として「簡単なターゲットとみられたから」と主張する識者も存在する。仮にその主張が正しいとすると、これまでイスラム過激派の活動が活発でなくテロ対策が不十分な地域はテロの標的になることが十分考えられる。そう考えれば、日本、とくに東京や大阪などの大都市で人通りが多い地域は標的になる可能性が十分にある。GWを控え十分なテロ対策が取られることが必要であり、また国民一人一人も十分に注意を払うべきである。
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