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2019年3月の国内政治動向 ー大阪のダブル首長選に関して 

今年は4年に一回の統一地方選挙が行われる年で、4月7日には道府県知事長選、政令市長選、道府県議選、および政令市議選が、21日には一般市長選、特別区長選、町長選、一般市議選、特別区議選、町村議選が行われる予定になっている。今年は夏に参議院議員選挙が予定されており、あわせて衆議院選挙が行われるのではないかという噂もある。各党とも統一地方選挙に向けて候補者擁立を進めており、特に野党第一党となった立憲民主党がどれだけ地方議会において議席を増やすことが出来るかは、参議院選挙の結果に少なからず影響を与えるだろう。

しかしながら、現在統一地方選挙で最も注目を浴びているのが大阪府知事選・大阪市長選である。3月8日、大阪府の松井一郎知事と大阪市の吉村洋文市長がそろって辞職願を提出し、知事・市長候補を入れ替えて4月7日の府知事選・大阪市長選に立候補し、一度住民投票で否決された大阪都構想の是非を問うことを表明した。7日は大阪府議選挙、大阪市議選、さらに堺市議選が同時に行われる予定であり、まさに「大阪の維新の会」(以下、維新)による府政・大阪市政に対する住民の判断が下されることになる。

維新はもともと今年11月に新たな都構想の是非を問う住民投票を行うことを考えていたが、実施日程の確約を巡って唯一他党で都構想に理解を示していた公明党と対立、府議会・大阪市議会とも過半数を下回わる現状で住民投票実現が暗礁に乗り上げていた。それゆえ、統一地方選挙で両議会選にて勝利することが都構想実現への至上命題となり、府知事選・大阪市長選と議会選と重ねることで議会選を有利に戦おうと画策したと言える。ところが仮に府知事・市長共に同じ選挙に再び出馬するとなると、当選したとしても任期は今年の11月末までになってしまう。そこで、地位を入れ替えることにより4年の任期を確保することを狙ったのであろう。また、松井知事が代表を務める国政政党「日本維新の会」は、親安倍政権的な政治路線から存在意義が問われ党勢が低迷しており、存在意義を示すには悲願である都構想を実現するしかない状況に追い込まれている。

維新は以前も橋下徹氏と松井一郎氏のコンビで入れ替えダブル首長選をやっており、他党は一斉に府政・市政の私物化だと批判を強めている。自民党は、公明党、立憲民主党、共産党などとの連携をにらみ、かつて副知事として松井知事に仕えた小西禎一(ただかず)氏(64)を府知事候補として擁立した。ただ、(府政・大阪市政の)野党間で「都構想」に代わる府政のビジョンが共有されているとは言えず、4月7日の府知事・市長選挙で野党が推す候補が松井・吉村氏に勝てるかは未知数である。

一方で、維新が府知事選・大阪市長選・府議選・大阪府議選の全てに勝利したとしても、再び住民投票を行って賛成多数となるかは不透明な部分が多く、大阪都構想の是非が政治的に完全に決着するのにはまだまだ時間がかかりそうだ。選挙結果が国政に与える影響についてであるが、大阪万博開催・IR(統合型リゾート)誘致を考えるとそもそも日本維新の会が安倍政権と全面対決する構図は考えづらい。4月7日の結果がどうであれ、維新の創設者である橋下徹氏が国政選挙に出馬するようなことがない限り、国政への影響は限定的であろう。

鈴木しんじ

鈴木しんじ慶應義塾大学SFC研究所上席所員

投稿者プロフィール

1972年生まれ、東京都中野区出身。東京工業大学博士(理学)。
東京外国語大学外国語学部フランス語学科卒、東京工業大学大学院社会理工学研究科博士課程修了。専門は政治経済学、公共経済学。
個人ホームページ https://www.suzuki-shinji.net/

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