シミュレーションに基づく東京都議会議員選挙の議席予想
今年7月に行われる東京都議会議員選挙について、2009年の都議会議員選挙における民主党と同程度に都民ファーストの会が得票することを想定し、選挙結果のシミュレーションを行った。5月1日現在の立候補者の所属を考慮した分析結果は表1の通りである。
全127議席のうち、都民ファーストの会(以下、都民とする)が第一党となり46(±1)議席、自民党は第二党に転落し37(+3または-4)議席、公明党は21(±1)議席、共産党は15(±4)議席、民進党は4(±1)議席となった。自民、共産の獲得議席の振れ幅が大きいのは、最下位当選を自民の候補者の一人と共産の候補が争う地域が多いであろうことによる。なお、今回の分析結果は下記のような仮定に基づいて導きだされたものであり、世論調査の結果に基づくものではないことをあらかじめ留意されたい。
なお、日本経済新聞がテレビ東京と共同で4月27日から30日にかけて行った世論調査では、都議選の投票先として自民が32%、都民が17%、民進は2% となっておいる。ただし、朝日新聞が4月3日に行った世論調査の結果では、都議選に大いに関心がある有権者に関しては、投票先として都民が自民を上回っている。今回以下の様に設定した仮定は現在の情勢を考慮したものではあるが、都民・民進・共産にやや甘く、自民・公明には厳しいものであるかもしれない。
仮定
- 投票率に関して
- 投票率が各選挙区において、前回(2013年)と前々回(2009年)の中間になることを想定、全体では約50%になる。
- 候補者の擁立および公認・推薦に関して
- 都民はすべての選挙区で候補者を擁立する。特に、全ての5人区以上の選挙区において2名の公認または推薦候補を擁立する。
- 民進党の公認予定候補者で離党を表明したものは、すべて都民の公認または推薦を受けられる。
- 各政党の得票に関して(その1:固定票の割合が比較的高い政党に関して)
- 自民党・公明党の得票率を前々回並みとする(小数点3位以下切り上げ)。つまり最低ライン=固定票以上は取れないと考える。
- 東京都生活者ネットワークに関しては、候補者を擁立している選挙区において直近の選挙における得票率を得ると考える。
- 共産党については、前回の得票率の平均(小数点3位以下切り上げ)を基礎得票率とする。民進、社民、生活者ネットのいずれかが候補を擁立している選挙区では基礎票以外の得票を見込めないが、それらの政党が候補者を擁立していない選挙区においては一定のリベラル票の上積みがあると考える。
- 各政党の得票に関して(その2:固定票の割合が比較的低い政党に関して)
- 各選挙区における予想投票率から投票者数を予測し、自公共生活者ネットの基礎票を引く。各誌の調査結果を参考にし、残りの浮動票に関して以下の様に配分する。都民・民進が候補者を擁立している場合は8:2、都民・民進・維新の場合は7:2:1とする。自公共以外に都民しか擁立していない場合は浮動票の配分を都民:共産を9:1とする。都民以外で候補者を擁立している政党が自民党のみの場合は、浮動票がすべて都民に行くと考える。
- 民進の現職で離党していない者がいる選挙区で、当選回数が3回以上または選挙区内に衆議院議員の現職がいる予定候補者に関しては、都民・民進の票の按分を7:3にするなど、調整を行う。
- 各政党の得票に関して(その3:政党間の相互推薦の影響に関して)
- 都民と公明党、都民と生活者ネットの間で結ばれた相互推薦により、公明党候補および生活者ネットの候補者の得票が増加することはない。
都民が単独で過半数の64を超えるには、4人区(5選挙区)、5人区(3選挙区)で2人以上、6人区(3選挙区)、8人区(2選挙区)で3人以上の候補者を擁立することが必要となるが、それをすべて行う体制を整えるのは難しいであろう。地方組織が整備されていた2009年の民主党でも過半数の候補者を擁立できなかったことを考えると、結成間もない地域政党である都民には厳しいと考えるのが自然である。大阪市議会において大阪維新の会が最初に臨んだ選挙、名古屋市議会において減税日本が最初に臨んだ選挙も同様の結果であり、第一党にはなったものの過半数には至らなかった。しかしながら、都民と相互推薦協定を行った公明党や東京都生活者ネットワーク合わせれば過半数を超える65議席は獲得することが見込まれ、さらに小池知事からソデにされた民進党も選挙後は与党となることが見込まれる。
さて、今年に入ってから民進党の現職の党からの離脱が相次いでいる。多摩地区など定数の少ない選挙区の者が多いが、全員が都民の公認または推薦を望んでいるようであり、これに対し都民の方も推薦を行うなど「来る者拒まず」のように見える。その結果、既に都民の公認予定候補者がいる場合は、推薦も含めれば現新併せて二人区において2人を擁立していることになる。実はこれが以下に示すように都民にとって仇となる可能性がある。
共産党は野党共闘を考慮してか民進党が候補者を擁立している二人区では候補者擁立を控えていたが、民進の現職が離党した場合は間髪を入れずに候補者擁立を行っている。本稿の仮定に基づけば、このようなケースにおいては非固定票であるリベラル票の一定割合が共産党候補に流れる(この仮定は不自然ではないだろう)。その結果、日野市など共産党候補が他地域よりも高い得票率を得てきた地域では、都民の公認または推薦候補が共倒れする可能性さえある。民進党の予定候補者が離党し都民からの支援を要望するという流れは止まりそうもないが、この状態が放置されれば民進・都民両者にとって悪い影響を及ぼしかねない。
さらに小池知事に関しては、豊洲移転問題で一部から指摘されているように「決断できない知事」というレッテル張りがされつつある。いつ最終決定するのかも含めてこの問題で決断をまちがえれば支持率が低下し、知事を支持する与党全体での議会過半数確保が不可能となれば選挙後の議会運営は一層厳しくなる。選挙までの2か月間、小池都政は第一の正念場を迎えつつあるといえよう。
*週刊現代2017年6月24日号の週刊現代に本稿で示した分析結果が取り上げられましたが、本稿における分析はあくまでオリジナルのものであり、他者に依頼されて行ったものではありません。
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