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木を見て森を見ず 連合の呪縛から逃れられない民進党

民進党は「2030年原発ゼロ」方針を3月12日の党大会で表明することを断念した。最大の支持団体である連合(日本労働組合総連合会)が猛反対し、それを受けて連合傘下の一部労働組合の支援を受ける国会議員が反対し党内で意見集約ができなかったためだ。一方、連合は共産党を含む野党共闘に一貫して難色を示してきた。特に、会長が神津里季生氏に代わってからはその姿勢が一層明確になったように思われる。
脱原発は、民進(民主)党の本来の支持層である都市部のリベラル層のみならず有権者の多数派が望む政策であり、しかも自民党が取り入れにくい政策である。にもかかわらず一部の労働組合とその支援を受ける議員がこれに反発している状況が続いている。民進党結成の際にも党綱領へ「2030年代原発稼働ゼロを目指す」と記載する予定だったが「原発に頼らない社会の実現」に修正を余儀なくされた。

 

影響力を増す製造業関係労組

執行部の方針を覆すくらいなので労組の影響力の大きさが伺えるが、まず連合がどのような組織であるのかを説明したうえで、実際に票の面でどれだけ影響力を持っているのか旧民主党時代からの参議院比例代表における労組票の動きから分析してみよう。
連合は日本労働組合総評議会(総評=主に旧社会党支持)と全日本労働総同盟(同盟=主に旧民社党支持)を中心として、合併により1989年に誕生した組織である。旧総評は官公庁労組中心で左派色が強く、旧同盟は重厚長大型の製造業の労組を中心とした組織で反共色が強い労組であった。現連合会長の神津氏は、新日鉄出身で基幹労連(労連日本基幹産業労働組合連合会)の事務局長を務めていたが、基幹労連の前身である鉄鋼労連は総評傘下だが旧民社党支持で反共色が強い組織であった。神津氏が早急な脱原発推進や野党共闘に強いアレルギー反応を示すのはこれまでの経歴から見れば容易に理解できることである。

下の表1(筆者作成)は2007年から2016年までの民主党および民進党の参議院選挙における得票数と労組票の推移である。製造業関係労組票はUAゼンセン・自動車総連・電機連合・JAM・基幹労連・電力総連のいずれかの組織内候補者名で書かれた票の合計であり、非製造業関係労組票は自治労・日教組・JP労組・情報労連・私鉄総連・JR総連のいずれかの組織内候補者名で書かれた票の合計である。

表1
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この表を見ていると、旧民主党が大勝した2007年の参議院選挙においては全体で2300万以上の得票を得ており、その中に占める労組票(労組の組織内候補の総得票数)の割合は約8%だった。一方で、最も党勢が低迷していた2013年の参議院総選挙においては全得票数が700万票余り、その中に占める労組票(労組の組織内候補の総得票数)の割合は約22.5%、民進党に移行した昨年の参議院選で全得票数が1100万票余り、労組票比は18%となっている。ここで労組票の総数は2007年の180万票余りから2016年の210万票余りと拡大し、さらに表2(筆者作成)からは製造業関係労組票/非製造業関係労組票の値も0.76から1.25へ大幅に増加していることが分かる。

表2
minshin02

以上から考えると、民主党→民進党が一般票を大きく減らし回復が見込めない中、製造業系労組は逆に票を増加させ、党勢の歯止めに貢献していたことが伺える。官公労などを中心に非製造業関係労組の加入者数が低下傾向にある中、製造業関係労組の加入者数は比較的踏みとどまっていることもあり、連合内で製造業関係労組の発言力が高くなっていることが推測できる。

 

このままでは日本社会党と同じ運命に
しかしながら、民進(民主)党は2007年から2013年の間に1600万票も比例票を減らしている。この「自民ではなく民主を選んだ1600万の有権者」の中で原発ゼロに反対する人は少数だと考えるのはごく自然なことだろう。もちろん争点は原発だけではないが、製造業関係労組の100万票を守るために1600万票を奪回するチャンスを逃すのかと問いたい。木を見て森を見ず、もっと言えば森を見る勇気さえないというのが今の民進党である。

蓮舫代表のこれまでの言動を見れば、自民党と明確に区別できる政策ビジョンも政権奪取構想もあるように思えない。当然、連合と決別しても脱原発を実現したいという覚悟もあるように思えない。さらに言えば、誰が党首になろうが脱原発方針を貫けば連合と対立し、連合からの支持が失われるのは明白である。一方で連合側も脱原発推進と野党共闘の足を引っ張るほど製造業関係労組と左派傾向が強い官公労系労組の内部対立が深まることが予想され、場合によっては「連合」という組織自体が分解しかねない。
民進党も連合も、重要政策に関する組織内における意見の隔たりを解消するのは困難であるように思われる。分裂を恐れどの方向にも動けない組織というのは役割を終えた組織といってよいであろう。もっとも、連合には直接的な競争相手が存在しないが、政党である民進党には自民党をはじめとした競争相手が存在する。このままでは各種選挙で議席を減らしていくことが必至であり、党内対立と労組依存体質から脱却できずに衰退していった日本社会党と同じ道を辿ることになるであろう。

 

中道左派・リベラル新党を一から立ち上げたほうが良い
ならばいっそのこと一から新党を立ち上げたほうが良い。民進党の受け皿となるのであれば、中道左派・リベラル新党であるべきである。野党議員の一部には保守二大政党を主張している人がいるようであるが、勉強不足も甚だしい。議会制民主主義が機能しているOECD諸国で保守二大政党となっている国はポーランドくらいで、二大政党が同じような主張をしているならば、有権者からすれば余程のことがない限り現与党からわざわざ投票先を変える気にはならないだろう。新党のコンセプトと政権獲得構想は言うまでもなく重要となるが、これについては機会を改めて提案したい。

鈴木しんじ

鈴木しんじ東京工業大学リベラルアーツ教育研究院非常勤研究員

投稿者プロフィール

1972年生まれ、東京都中野区出身。東京工業大学博士(理学)。
東京外国語大学外国語学部フランス語学科卒、東京工業大学大学院社会理工学研究科博士課程修了。専門は政治経済学、公共経済学。連絡先はinfo@suzuki-shinji.net (@は半角に書き換えてください。)

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