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最近の国内政治動向 ー 改憲論議で高まりそうな与野党対立

7月の参議院選挙後初めての国会となる臨時国会が4日召集された。今国会の最大の論点となりそうなのが国民投票法改正案であるが、日米貿易協定の承認、消費税10%引き上げ後の景気状況、関電役員らの金品授受問題が主要な論点となるであろう。さらに野党は、日韓関係、中東ホルムズ海峡における米国が求める有志連合への対応、年金財政検証、かんぽ生命保険の不正販売問題などに関しても政府の対応を追及することが考えられる。また、就任以来その言動が批判を浴びた小泉進次郎環境大臣に対して環境問題への知識に関する追求が続きそうだ。

先月も述べたが、国民投票法改正案の正式名称は「日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律案」であり、同法案は憲法改正の手続を改正する法案である。憲法改正は安倍首相の悲願であり、参議院選挙が終わったことや来年夏のオリンピック開催時に政治対立で国民の一体感が削がれることを防ぐためにも、安倍首相は今臨時国会でできるだけ改憲論議を進めたいと考えているであろう。一方で野党側は、先日立憲民主党に入党し国対委員長に就任した安住淳元財務大臣が「憲法より関電」と述べるなど、この問題の全容解明を優先する方針だ。また、先日の日米首脳会談で合意した日米貿易協定の内容に対しても野党は譲歩しすぎと批判を強めそうだ。今回の協定で日本は牛肉や乳製品の一部などの農産物についてTPPと同水準まで関税の引き下げに応じたが、米国が日本車と自動車部品に課していた2.5%の関税もTPPの基準で考えればほぼ撤廃が担保されなければならなかった。安倍首相は今回の合意を「ウィンウィン」と胸を張ったが、トランプ政権は今後もサービス分野を含む包括的な自由貿易協定(FTA)の交渉開始を求めるなど日本に対して揺さぶりをかけてきそうである。

野党については、立憲民主党・国民民主党・社民党は衆参で統一会派を結成し、さらに衆院では野田前総理が代表を務める衆議院会派「社会保障を立て直す国民会議」がこれに加わる。その結果、衆議院では120名、参議院では61名がこの統一会派に所属し、野党第一会派の規模は2000年代前半の旧民主党と同水準まで回復したことになる。しかしながら、会派内で消費税・原発・改憲といった主要政策に関する意見の隔たりは大きく、統一会派として共産党やれいわ新選組とどのように共闘を進めていくのかも明確になっていない。統一会派結成表明後も立憲民主党や国民民主党の支持率は低迷したままであり、国民の期待が強くないことが分かる。それでも、安倍政権が野党が望むテーマの審議をおろそかにして改憲論議を強引に進めれば、それだけ野党は結束して対決姿勢を強めるであろう。今回は特に憲法改正がテーマとなるだけに野党が徹底抗戦する可能性はかなり高いと言える。

鈴木しんじ

鈴木しんじ慶應義塾大学SFC研究所上席所員

投稿者プロフィール

1972年生まれ、東京都中野区出身。東京工業大学博士(理学)。
東京外国語大学外国語学部フランス語学科卒、東京工業大学大学院社会理工学研究科博士課程修了。専門は政治経済学、公共経済学。
個人ホームページ https://www.suzuki-shinji.net/

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