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自民党の補完勢力に帰結する前原「対案路線」

民進党の代表選が始まった。これまでも繰り返し述べてきたように、枝野氏・前原氏のどちらが代表になっても党の団結は厳しいという私の考えは変わらない。しかしながら、国会議員の支持を中心に前原氏が有利という状況を見るにつけ、彼を支持する多くの党所属議員の政治感覚には疑問を感じざるを得ない。本稿では、前原氏の浅学さを指摘した上で、自民党に対峙する二大政党の一翼は中道左派政党でなければならず、共産党を含めた野党共闘を捨て都民ファーストの会周辺との連携を模索しても支持の拡大は見込めないことを強く主張したい。

保守二大政党制はありえない

前原氏に代表されるような民進党所属の「保守系」議員は、「中道保守」とか「穏健保守」などと言う言葉をよく口にする。要は安倍政権が右寄りすぎるから、真ん中にいれば国民の支持が戻ってくるだろうという浅はかな願望を抱いている。しかしながら、便宜上「右派」を「外交・安全保障でタカ派かつ経済的には小さな政府志向」と定義すると、安倍政権はどこまでも右派一辺倒の政権とは言えない。特に経済政策的には、教育の無償化なども含めナショナルミニマム・再分配的な政策を取り入れる傾向がある。外交・安全保障は確かに安保法・憲法改正などタカ派的な傾向が顕著ではあるが、本年の終戦記念日に閣僚が靖国参拝を控えたり、一昨年の安部談話で「植民地支配」「侵略」と言う言葉だけは用いて一応近隣諸国に「配慮するふり」を見せたりしている。折を見て、有権者や諸外国に対して自分たちが「中道(右派)」だという印象を与えようと試みているといえる。

それゆえ、「中道保守」とか「穏健保守」と訴えても、多くの無党派層の心には響かないだろう。目指す方向が自民党と根本的にどう違うのか見えないのである。前原氏など「保守系」議員の多くは保守二党性の実現を考えているようであるが、これこそ浅学の極みで実現不可能である。前原氏は自民党と対峙する二大政党の一翼は8割方政策が同じであるべきだと述べていたが、「2割の違い」は本質的ではない。与党である自民党は選挙に勝つなら民進党が重視するような再分配的政策をある程度取り入れるだろう。政策に大した違いがないのならば、有権者が組織としての安定感に大いに欠ける民進党にあえて政権を託そうとはしないのは当然である。

「対案路線」などと言っているのも愚の骨頂であり、良い対案であれば与党が選挙前にそれを実行し、与党の功績として誇示されて終わりという間抜けな結果に終わるのは目に見えているのだが、前原氏には理解できないようである。安保法制、さらに憲法改正にしても、基本的に集団的自衛権を合憲と考えているようなので安保法制の違憲性を真剣に考えることなく、安倍政権の改憲案に「修正」と言う形で協力しようとすることが予想される。前原路線を進めるならば、民進党は「対案を示す現実的野党」と自称しながら結局は自民党の補完勢力でしかない日本維新の会と同じ道をたどるのは必至だが、まとまりがないこの党では途中でこれに対する反発が起き、「前原代表」は党内対立から蓮舫代表と同じ運命をたどるであろう。

さらに「穏健保守」という言葉自体、積極性や主体性に欠ける印象を受ける。かつての自民党の宏池会的なものイメージしているのかもしれないが、宏池会に対しては、小選挙区導入を決断出来ずに自民党の分裂・政権交代を許した宮澤元首相、加藤の乱で決断力のなさから総理候補から転落した加藤紘一氏らの「優柔不断なお公家集団」というネガティブな印象を持っている有権者も多いであろう。

諸外国を見てみても、OECD諸国で複数の保守政党が議席数の一位、二位をしめているのは極端な右傾化が懸念されているポーランドくらいであり、小選挙区制度を採用している国の多くでは中道右派(保守)-中道左派(社会民主主義・リベラル)の二大勢力が対峙している。最近はフランスでは中道を標榜するマクロン大統領の与党「共和国前進」が国民議会で勝利し多数派を形成したが、それとてマクロン政権の急激な支持率の低下と共に先行きが不透明である。マクロン氏が選ばれたのは極右のルペン氏が大統領になるのを阻止するという消極的な要因が大きく、「共和国前進」が議会選で勝利したのもマクロン氏が大統領なのでとりあえず与党を勝たせてあげようという有権者心理が大きく左右したと考えられる。都議選における都民ファーストの会の勝利と同じようなものである。長期的に見て、中道右派の自民党と対峙するのは中道左派政党でしかありえない。

 

野党共闘の否定・都民ファーストの会との連携は自爆行為

前原氏は共産党を含む「野党共闘」を否定し都民ファーストの会周辺との連携を考えているようであるが、これこそ自爆行為である。民進党が本来果たすべき役割は、左の支持を固めて、無党派層を取り組む政策を打ち出すことである。左を捨てて真ん中の票を取りに行けば支持が拡大すると思い込んでいるようであるが、これもまた実に浅はかである。先日の投稿でも示したように、政策的に真ん中に位置する無党派層は政策に対するこだわりが党派性の強い有権者よりも薄い。無党派層がその時の「風に」で投票先を変える傾向がある以上、彼らから継続的な支持を得るのは難しい。無党派層からの支持を得るには、インパクトがありかつ中道右派政党である自民党が許容できない政策を打ち出すことが必要である。

脱原発はそのような政策の一つだと言えるのだが、小池都知事の築地移転問題の決断を見るにつけ、彼女に自民党・日本経団連・経産省・製造業系労組の全てと対立してそれを実現しようとする気構えがあるのかは甚だ疑問である。仮に都民ファーストの会が国政政党化しても、打ち出される政策は具体性がなくインパクトがないものの羅列になる可能性は高いだろう。一方で、前原氏自体が代表選において原発問題で最も脱原発に消極的な旧民社党グループの支援を取り付けている以上(前原氏の推薦人には電力総連の組織内議員も含まれる)、彼自身がこの問題で思い切った方向性を打ち出すのは難しいだろう。都議選の時のように小池氏が「既に行政の長だから与党を支持する」という理由もなく、政策もあやふやならば、仮に前原民進党が都民ファーストの会と組めたとしても政権を担えるような存在になれるとは思えない。

鈴木しんじ

鈴木しんじ東京工業大学リベラルアーツ教育研究院非常勤研究員

投稿者プロフィール

1972年生まれ、東京都中野区出身。東京工業大学博士(理学)。
東京外国語大学外国語学部フランス語学科卒、東京工業大学大学院社会理工学研究科博士課程修了。専門は政治経済学、公共経済学。連絡先はinfo@suzuki-shinji.net (@は半角に書き換えてください。)

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