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激変が予想される国際関係と日本が果たすべき責任

安倍総理は28日から29日にかけハワイの真珠湾を訪問し、オバマ大統領と共に旧日本軍による真珠湾攻撃の犠牲者を慰霊した。今回の真珠湾訪問に関して安倍総理は歴史認識を示さなかったとの批判があるものの、世論調査の結果を見ても大多数の日本国民から一定の評価を得たと言えよう。一方で、翌30日に稲田防衛相は靖国神社に参拝を行った。この参拝に関して稲田氏は総理と事前の相談はなかったと述べているが、真珠湾訪問で総理の支持基盤である右派層の不満が高まることへのガス抜きとして、政権内で事前から準備されていたのではないかとの見方もできよう。

さて、ここのところ安倍総理は外交にかなり力点を置いているように思える。11月中旬にはアメリカ次期大統領への当選が決まったトランプ氏との会談のため訪米し、12月上旬にはロシアのプーチン大統領が来日し安倍総理と首脳会談を行った。さらに、来年初頭には今度は安倍総理がロシアを訪問するとのことである。これだけよく動いているのは、野党第一党の民進党の支持率が低迷しているため外交に時間をさく余裕があるからなのであろうが、予想外の結果になったアメリカ大統領選挙が大きく影響していると筆者は考える。そして、一連の活発な外交は用意周到に準備されたものでなく、場当たり的というか明確なポリシーない可能性があると述べたい。

筆者の推測ではあるが、プーチン政権はアメリカ大統領選でヒラリー・クリントン氏が勝てばオバマ政権の外交路線が継続しロシアの孤立が深まると考え、遅くとも今年前半あたりからG7首脳の中で最もウクライナ紛争やロシア国内の統制強化を問題視していない安倍総理に、領土問題の進展を匂わせながら近づいたのではなかろうか。しかしながら、上記のウクライナ紛争や人権問題を問題視しないトランプ氏が予想外に当選したので、日本に必要以上にアプローチする必要がないとの判断から方針転換をしたのではないか。だとすれば、2時間以上も遅刻して来日し領土問題で全く譲歩しなかったのも当然の帰結である。一方で、安倍政権としては対露経済協力の担当閣僚まで任命し一度本腰を入れた以上、収拾がつかなくなったのではないかとも考えられる。安倍総理が記者会見で一方的にプーチンのことを「ウラジミール」と呼んで親密さを懸命にアピールしていたのはいささか滑稽に思われた。

ドイツのメルケル首相をはじめとする他のG7首脳がトランプ氏当選に困惑し就任までは様子見している一方で、安倍総理のトランプ氏との会談は極めて異例であり、明らかに前のめりの姿勢を感じる。これは安倍総理がトランプ氏の差別的な言動や人権問題軽視といった資質を問題視していないことの証左だとも言えるが、トランプ氏の当選直後からロシアの日本に対する態度が変化したとしたら、そのことは訪米の決断に影響を与えていたかもしれない。しかしながら、安倍・トランプ会談はオバマ大統領に不信感を与えたようである。プーチン来日前に既に領土交渉進展が望み薄になり政権支持率の低下も予想される中、オバマ大統領のレガシーへの協力と国内の野党も反対しにくい真珠湾訪問は政権にとって渡りに船だったかもしれない。

来年はトランプ大統領就任に伴い国際関係に不透明性が増し、あまり良くない形で大きな変化が生じることが十分に予想される。先進諸国がこれまで作り上げてきた民主主義・法の遵守・人権の尊重・言論の自由・公正な市場といった共通の価値観を軽視する指導者が多くなることも考えられ、これは憂慮すべきことである。トランプ氏とプーチン大統領は両国間の関係改善を試みているようであるが、独断専行的な両者がいつ対立しても全く不思議ではない。また、中国に関してトランプ氏は「一つの中国」見直しを示唆しており、米中の緊張関係がさらにさらに先鋭化する可能性がある。少なくとも自国の利益を最優先するという名目で二国間交渉を重視する指導者が増えることにより、多国間の協調関係の維持は困難さを増すであろう。

しかしながら先進国共通の価値観を否定したところで、長期的に考えればどの国にとってもより良い結果が生まれるとは思えない。特にテロ対策・難民対策・環境問題は、国際社会が法と人権を尊重し結束して取り組まなければ事態が悪化するのは目に見えている。安倍総理が共通の価値観を軽視して二国間交渉に没頭することが無いよう望む。特にロシアに関しては、今回のプーチン来日の結果が示すように、日本がロシアのウクライナなど他国への介入を大目に見たところで北方領土を返還してくれるような相手ではない。ロシアが民主主義国家になったからといって北方領土を返還してくれる保証があるわけではないが、今よりは法を遵守する姿勢は強まるだろうからまともな交渉ができるかもしれない。トランプ政権の下でアメリカの外交方針がどう変わろうとも、日本は民主主義先進国家として果たすべき責任を忘れてはならない。

鈴木しんじ

鈴木しんじ東京工業大学リベラルアーツ教育研究院非常勤研究員

投稿者プロフィール

1972年生まれ、東京都中野区出身。東京工業大学博士(理学)。
東京外国語大学外国語学部フランス語学科卒、東京工業大学大学院社会理工学研究科博士課程修了。専門は政治経済学、公共経済学。連絡先はinfo@suzuki-shinji.net (@は半角に書き換えてください。)

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