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内閣による衆議院の恣意的な解散は容認されるべきことか?

東京10区と福岡6区の衆議院補欠選挙はいずれも自民党系候補が大勝した。9月に臨時国会が開会したあたりから、年末から年始にかけての衆議院解散・総選挙がささやかれるようになり、新聞でもそれが盛んに取り上げられるようになった。「解散風」は10月16日に行われた新潟県知事選挙で野党系候補の米山隆一氏が勝利したことで一時小康状態となったが、今回の補欠選挙の勝利でまたそれが強まりそうな感じである。

前回の衆議院総選挙から2年も経っていないにもかかわらず、安倍首相が衆議院解散を選択するかもしれない理由としては、以下のことが指摘されている。すなわち、首相が目指す憲法改正については、政治プロセス的に国民投票に至るまで2-3年かかることが予想される。それまで①自民党総裁であり続ける、および②衆議院での2/3の議席を確実にするには、野党第一党の民進党の支持率が低迷しているうちに解散して大勝することが①、②の実現に重要な意味を持つ。現にこれを見据えて、自民党の総裁任期をこれまでの3年2期の計6年から、3年3期の計9年まで延長することが予定されている。また、連立与党の公明党が最も重視していると言われる都議選は来年の夏に行われる予定なので、公明党としても衆議院と都議選のW選挙は避けたいということも年末年始解散説の背景にあると指摘されている。

しかしながら、マスコミの報道や野党(特に民進党)の対応を見ていると、時の内閣の都合が良いように解散権を行使すること、さらに言えば政権基盤が安定しているのに自身の権力を強化するために頻繁に解散を行うことに対して、何の疑問も感じていないように思われる。また、不思議なのが野党で、筆者の知る限りではあるが、いつでも解散歓迎であり、「常在戦場」などというマッチョな言葉で強がっている。いくら解散が恣意的なものであっても、それに反対すれば党内外から弱腰といわれるからであろうが、そんなことでは衆議院の平均任期2年が定着しかねない。全く批判が出ないのは、与党主導の選挙サイクルにはまっていることの証左である。これでは統一地方選も含めれば毎年選挙があるようなものであり、消費税のような明らかに痛みを伴うような政策は実行できず対処療法的な政策しか打ち出せない危険性がある。

またおかしいのは、日本の場合、自民党も民進党(旧民主党時代も含めて)も党首の任期が衆議院の任期である4年 よりも短いことであり、選挙での敗北よりもむしろ党首選での敗北によって衆議院の任期途中に首相が交代することが頻繁にあった。イギリスの2大政党のように、党首の任期がないというところまで行かなくてもよいが、自民党のこれまでの総裁任期である3年2期計6年というのはあまりに短すぎるといえる。こうしたことが、解散が総裁の権力を強めるという「神話」を定着させてしまった一因であろう。

衆議院で内閣不信任決議案が可決されるか信任決議案が否決されるかした場合に、内閣がそれに対抗する手段として衆議院を解散することを「対抗的解散」、それ以外のケースで解散することを「裁量的解散」と呼ぶが、日本国憲法の条文に直接的に裁量的解散を認める条文が存在しないこともあり、そもそも裁量的解散が憲法上認められているかについては未だに議論がある。また、海外を見ても、ドイツでは内閣不信任は代わりの首相が連邦議会(下院)で指名された場合にのみ成立するという「建設的不信任制度」があり、イギリスでは2011年に議会任期固定法が成立し、内閣による議会(下院)の解散権は廃止された。このように、他国では内閣による解散権の行使が制限されるケースが存在しているのである。

ここで、対抗的解散に限定してもなぜそれが認められるかと言えば、安定的な政権運営が不可能になった時の対抗手段として内閣に解散を認めているということなので、安定的な政権運営とはどういう状態なのかを今一度考えてみる必要がある。結論から先に言えば、内閣提出法案の成立可能性を考えると、通常は衆参両院で与党が過半数を占めている状態と言えよう。ところが、小泉政権は公明との連立によって衆参両院で過半数の議席を確保していたが、参議院で与党内に造反が出て重要法案である郵政民営化関連法案が成立しなかったことを理由に衆議院の解散を断行した (郵政解散)。しかし、この郵政解散についても、内閣の存立自体が危機に瀕しているわけではないにもかかわらず、シングルイシューのために解散するのは正当性があるのかという批判を受けた。

シングルイシュー解散の対案としては、国民投票制度の整備を憲法改正以外にも拡大し、重要な政策に対してイギリスなどの諸外国のように国民投票を利用することが挙げられよう。このように首相の解散権のあり方を再考することも、首相の権限や選出方法と同様に統治機構改革の一環である。特に野党は、安保法制でも権力乱用との批判を繰り広げてきた以上、首相や内閣の権限についてどこを強めてどこを弱めるべきか、また現行憲法下の法改正でどこまで対応できるのかについて主張を明確にすべきである。できない部分については、改憲に絶対反対でない民進党や日本維新の会などは、憲法改正の論点の一つとして主張すべきであろう。

鈴木しんじ

鈴木しんじ東京工業大学リベラルアーツ教育研究院非常勤研究員

投稿者プロフィール

1972年生まれ、東京都中野区出身。東京工業大学博士(理学)。
東京外国語大学外国語学部フランス語学科卒、東京工業大学大学院社会理工学研究科博士課程修了。専門は政治経済学、公共経済学。連絡先はinfo@suzuki-shinji.net (@は半角に書き換えてください。)

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