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民進党代表選と収束しない路線対立

民進党の岡田代表が都知事選最終日の7月30日に、9月に実施予定の次期代表選に出馬しないことを表明した。本人は否定しているが、事前の世論調査で党本部が主体となって擁立した野党統一候補の鳥越氏が苦戦を強いられていることが分かったため、都知事選惨敗により野党共闘路線への批判が党内で高まるのを避けるために先手を打ったものと考えられる。

民進党内で岡田代表の続投に批判的な発言をしていたのは、もともと安全保障問題で自民党に考えが近い前原元外相・長島昭久元防衛副大臣ら、それに旧民主党代表選に出馬した経験がある細野元環境相・馬渕元国交相、大畠グループに所属している増子元副経産相らである。しかしながら、個々の反対の理由としては、安全保障政策の相違から野党共闘路線に反対という政策的理由と、民主党政権時にその中枢にいた岡田代表ら「七奉行」に対する対抗心という「政策とは直結しない権力闘争」があるように思われ、全員が同じ方向を目指しているとはいえない。特に細野元環境相は岡田代表の「後継候補」と目される蓮舫代表代行と会談するやいなや、方向性は同じだとして立候補しない可能性を示唆した。現時点では代表選出馬に必要な推薦人(党所属国会議員20人以上)を確保出来ているのは蓮舫氏だけであり、同氏を中心に選挙戦が行われるであろうが、野党共闘路線に批判的な勢力から立候補者が出る可能性は高いだろう。蓮舫氏が当選した場合、修正があるにせよ岡田代表の下で進んだ野党共闘の枠組みは基本的に維持されると考えるのが自然である。しかしながら、保守系の候補者が当選し、共産党など野党3党と安保法廃止を軸に共闘してきたこれまでの流れを止めるとなると、民進党に好意的なリベラル層の離反は避けられないであろう。党勢がようやく回復しつつある同党にとって致命傷になりかねない。

昨年9月20日の朝日新聞によると、安保関連法成立に反対した民主党や維新の党など野党の対応について、民主支持層では「評価する」が73%であったことを考えると、野党共闘路線を白紙に戻すことはコアな支持者に背く行為であると言ってよい。これでは、共産党よりは右で、真ん中より左の層(中道左派層)を固めることは出来ない。それでは中道層の支持を獲得すれば良いと思うかもしれないが、簡単ではない。それは自民党にも民進党にも投票しうるような無党派層にとって、自民党と本質的に変わらない政策を掲げたとしても組織運営の安定性で劣る民進党にあえて投票しようという気にはならないからである。民進党内に限らず「保守系」を自任する非自民党国会議員にありがちなのが、自民党との違いを打ち出そうとして「改革」というスローガンを掲げることである。

しかしながら、そもそも「改革」というのは恒久的に存在し続ける対立軸にはなりえない。与党が野党の主張する「改革」を進めれば、「改革」だけを主張している野党の存在意義は無くなってしまう。それに改革の中身自体も、国会議員の定数を減らしたり、公務員の数を減らしたりする「身を切る改革」が中心であるが、日本における人口一人あたり国会議員数も公務員の数も現状では世界的に見て少ない方である。削減が経済活性化や財政健全化に結びつくとは到底考えられない以上、それだけを言って政権がとれるほど甘くはない。議員定数と公務員数の30%削減を訴えているおおさか維新の会にしても、今回の選挙で得た比例票500万票のうち、1/3を占める約170万票が大阪・兵庫両府県で得られたものだったことを考えると、全国的な支持を得ているとは言い難い。議員定数削減に熱心とは言い難い安倍自民党が選挙で勝利し続けていることを考えれば、その限界は明かである。

一方で、今後も野党共闘路線を続けるにしても、これまで岡田代表が取ったような政権構想も示さないような対処療法的なやり方では、政権の枠組み自体が問われる衆議院選挙を乗り切ることは困難であろう。ここで重要なのが、仮に次期衆議院選挙で野党が勝ったとしても、参議院では野党は圧倒的少数なので、実質的には少数内閣にならざるを得ないことである。民進党はおろか野党四党と公明党を足しても参議院で過半数を得ることは出来ないため、自民党との協力が不可欠になる。協力の度合いについても、参議院での問責決議案が可決しないようにするには自民党を含めた大連立を成立させることが必要となる。野党だけで政権を取るとなると、少なくとも次の次の参議院選挙まで待たなくてはならなくなる。そのことを踏まえて、次の政権で何をやって何をやらないのかを明示すべきである。

現実的なのは野党共闘路線を続けながら、野党間で政策協議を行い合意点および相違点を明確にすることである。どうしても消費税や安全保障の面で合意ができないとなれば、部分提携にとどめれば良いのであって、野党第1党が協議に参加しない というのでは有権者から本気度を疑われるだろう。一方で、自民党からの改憲への協力要請に関しては、最低でも安保法制および特定秘密保護法の廃止または抜本的改正を条件とすることが必要だろう。また、支持団体である連合に対しても、野党共闘への理解を求めるべく説得を行うべきである。次期代表には、岡田代表には欠けていた積極性・主体性が求められるのは言うまでもない。

鈴木しんじ

鈴木しんじ東京工業大学リベラルアーツ教育研究院非常勤研究員

投稿者プロフィール

1972年生まれ、東京都中野区出身。東京工業大学博士(理学)。
東京外国語大学外国語学部フランス語学科卒、東京工業大学大学院社会理工学研究科博士課程修了。専門は政治経済学、公共経済学。連絡先はinfo@suzuki-shinji.net (@は半角に書き換えてください。)

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