いわゆる「違憲状態」を解消するために衆議院議員の定員削減と都道府県ごとの定数の見直しが各党間で議論されています。その時期などについては議論が続いていますが、各県への定数の割り振り方法に関してはいわゆるアダムス方式に議論が収斂してきたようです。
今回の議論には一定の評価ができると考えています。それは、今回の議論では定数割り振りのルールを先に決めようとしていることです。これまでの選挙区割の見直しや定数削減の議論では、どの県を何人削減して、どの県の定員を何人増やすといった「結果」を決めることに終始してきました。そしてその「結果」を導くための事前に合意されたルールはなく、政治的な事情から恣意的に決められてきました。定数割り振り見直し問題が、政治の裏側の駆け引きの道具されてきたであろうことは想像に固くありません。政治の透明性を著しく阻害しています。
それに対してアダムス方式というルールを先に決めようとしていることは、これまでよりは多少は恣意性が低いと考えています。「多少は」と書いたのは、表面的にはルールの議論であってもそのルールを適用した結果はすでにわかっているため、今の段階では結果の議論とさほど変わらないと考えるためです。それでも私はルールを決めることを議論することに大きな意味はあると考えています。
その理由を述べる前に、日本と同じく小選挙区制をとるアメリカ合衆国下院の定数の各州への割り振り方法をみてみましょう。
アメリカ下院の定数 435 議席を 50の州に何名割り振るかの見直しは、10 年ごとの国勢調査の結果を受けて必ず行うことが定められています。その再配分は政治課題としてではなく、国勢調査局がハンチントン方式とよばれる均等比例方式により機会的に再配分されます。
このアメリカの制度で重要な点は、以下の2点です。
1)割り振りのルールが予め厳密に決まっていること
2)定員割り振りがそのルールに反していないか定期的に見直し、割り振り数をルールに合わせて変更すること
この方法は、政治や行政側の恣意性が入り込む余地がないと言う点でとても優れた方法だといえます。
いま日本で論じられているのは、この2つのポイントのうちのひとつである「ルールを定める」という点でだけで、ふたつ目の「ルールを維持しそのルールにあわせて割り振り数を見直す」ところまで及んでいません。(大島衆議院議長がやっとこの点に言及したという報道もありました。)
今の議論を一歩すすめて、定員割り振り方式(アダムス方式)を一回限りではなく恒久的に維持し、そのルールに合わせて割り振り数を見直すという透明性のある制度構築まですすめるべきだと考えます。
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