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選挙マニアが投票日に狙う「零票確認」と「投票済証」とは

選挙になると必ず出てくる「選挙マニア」の存在が知られてきている。投票に行かない若い世代も多い中で、わざわざひと手間かけて投票行動を楽しむ彼らの行動は、最近Twitterなどでも話題となっている。特に彼らの中ではよく知られている投票日の「零票確認」と「投票済証」に焦点を当ててみた。

零票確認

零票確認とは、朝一番に投票所が開かれた際、まだ誰も入れていない投票箱の中に、何も入っていないことを確認する作業のことだ。投票箱の中には当然何も入っていないはずなのだが、これを証明するために、最初に投票用紙を入れようとする人、すなわち投票所の一番最前列に並んでいた人が、この役割を担うことになる。

零票確認と言葉にすると難しいように思えるが、実際の作業は非常にあっさりとしたもので、投票箱の中を空けて、中身が入っていないことを最前列の有権者や立会人が確認する。要領としては、箱の中に何も入っていないことを確認する手品と変わりがない(ちなみに投票箱はふたを開けるのではなく、側面が空く仕組みの物が多い)。その上で、投票箱を施錠し、最前列の有権者が零票であったことを投票録に署名するだけだ。もちろん、最前列に並んでいた人は最初に投票箱に投票用紙を入れることになる。

零票確認自体は公職選挙法施行令第三十四条に定められた手続きだが、先述のとおり一瞬で終わってしまう作業のため、もちろん最前列の有権者に対して報酬があったりするようなものではない。ただ、投票箱の中身を確認できるという非常にレアな機会であり、投票所ごとに一人しか経験できないことなどから、この「零票確認」を狙って早朝から投票所に並ぶ人も多いそうだ。

投票済証

投票済証とは、投票所で実際に投票を済ませたことを証明する証書のことだ。投票済証明書などと呼ばれることが多いが、この証明書、実は公職選挙法や関連法規に一切の規定がなく、慣例として役所の選挙管理委員会が任意で交付していたもの。投票済証は任意交付のため、投票を済ませた人が自ら申し出をして初めて発行される。この制度を知らない人は当然申し出をしないために、そもそもこの証明書を見たことがないという人もほとんどだ。

では、なぜこのような制度があるのだろうか。投票日は一般的に日曜日だが、例えば日曜日に働いている労働者や、期日前投票に行った者が、職場の雇用主に職場の仕事を離れて投票したことを証明することなどのために使われる。公共交通機関が遅延したときの「遅延証明書」のような使われ方が多いということだ。この点では便利な制度ともいえるが、任意交付である投票済証については、消極的な見解を持つ選挙管理委員会も多い。

それはなぜか。以前から労働組合などの組織が自らの支援や推薦をする候補者に対して、実際に投票に行ったかどうかを確認するために、この「投票済証」を回収させて確認していたということが知られている。選挙の投票に行くかどうかは、行くべきかどうかという議論はさておき、有権者の任意(自由)とされているため、投票済証の制度が、広い意味での投票の自由を侵害しかねないということになるのだ。自宅のある町内会や商店街、会社などが「投票済証」を回収するようなことがあっては、委縮してしまい投票傾向に影響が出てしまうと考えれば、必ずしも投票済証の制度が万能ではないことがわかるはずだ。

しかし、投票済証については有効活用を求める声も多い。投票率が年々下がっている中で、一部の商店やレストランなどが、投票済証の提示で割引サービスを始めるなど、様々な試みが始まっている。投票済証そのものに法的根拠も法的拘束力もないため、こういったアイデアによる活動は少しずつ広がりつつあるものの、投票率を著しく向上するまでには至っていない。

次の選挙では試してみたい

「零票確認」も「投票済証」も、有権者の資格を持っていれば、費用をかけずに経験ができることだ。選挙権18歳引き下げが施行され、投票率を上げる取り組みも活性化している中、少しの手間で得られる選挙の楽しみ、一度はチャレンジしてみてはどうだろうか。なお、「投票済証」は法的根拠がないため、選挙管理委員会が発行するかどうかは選挙管理委員会の任意とされているため、用意がない場合や発行しないケースもあるかもしれないので、その点だけ注意が必要だ。

大濱﨑 卓真

大濱﨑 卓真ジャッグジャパン株式会社 代表取締役社長

投稿者プロフィール

1988年生まれ、三鷹育ち。青山学院高等部卒業、青山学院大学中退。国会議員秘書、システム開発会社でのサラリーマンを経て、2010年独立。東日本大震災の際には、帰宅困難者向けに避難所を地図にした Google Maps「東京都内避難場所」を震災発生直後にリリースし話題に。現在は、選挙コンサルタント、自由報道協会記者という立場のほか、教育系会社取締役など、複数の法人役員を兼務している。

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