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自民党の「オープンエントリー」は公選法違反(人気投票の公表)に問われないか

自民党が、参議院選挙(全国比例)の候補者を「有権者が候補者選びに参加できる仕組み」として取り組むプロジェクトが話題だ。複数の公認候補予定者の中からインターネット投票を実施して得票数最上位の人物を参院選比例代表候補予定者として、自民党選対本部で最終的な公認決定を行うとしている。自民党が「オープンエントリー」と名付けたこの制度、公職選挙法としての問題はないのだろうか。

まず、今判明している「オープンエントリー」の制度の概要は、下記の通りだ。(本記事執筆時点での公式情報(自由民主党公式サイト内特集ページ)を参考にしている。)

  • 2016年7月に予定されている第24回参議院議員選挙に向けたプロジェクト。名称は『参院選公認候補「オープンエントリー」プロジェクト2016』
  • 2016年参院選において被選挙権があり、自由民主党の基本理念に賛同する方であれば、誰でも応募が可能。
  • 応募者に対する書類審査と面接を行い、ファイナリストを最大10名決定する。
  • 2016年4月にファイナリストに対するインターネット投票を実施し、得票数最上位の方を参院選比例代表候補予定者として、自民党選対本部で最終的な公認決定をする。
  • ネット投票では自民党員だけでなく、事前登録で認められた一般の方でも参加できる方式とする。
  • ネット投票が可能なのは、2016年7月に予定されている第24回参議院議員選挙投票日において投票者の資格を有する者である。
  • 2016年4月1日〜2016年4月20日の間にネット投票が行われる。ネット投票は中間発表が行われる。

次に、公職選挙法には下記の条文がある。

(人気投票の公表の禁止)
第百三十八条の三  何人も、選挙に関し、公職に就くべき者(衆議院比例代表選出議員の選挙にあつては政党その他の政治団体に係る公職に就くべき者又はその数、参議院比例代表選出議員の選挙にあつては政党その他の政治団体に係る公職に就くべき者又はその数若しくは公職に就くべき順位)を予想する人気投票の経過又は結果を公表してはならない。

これを前提に、公職選挙法の条文を一つ一つ確認していき、その違法性があるかどうかについて確認していこう。 

何人も、

公職選挙法における「人気投票の公表の禁止」が該当する対象は、「何人も」としている。この場合の何人も、というのは、報道機関だけに限定しているわけでもなく、自然人や法人を問わず、すべての者が対象になると考えるべきだ。これは多くの法律で同様の解釈で異論の余地はないはずなので、詳細の解説は控える。

選挙に関し、

ここでいう「選挙に関し、」というものの意義や定義はなにか。これについては、昭和28年3月の「国警質疑集」に下記のように記載されている。

 法第138条の2においていう「選挙に関し」とは、特定の告示された選挙のみを指称するものであるか、或は他の選挙若しくは将来起りうる選挙をも含むものであるか
 選挙期日の告示または告示の有無を問わず特定の選挙のみを指すものである。

ここの回答では、重要な要素が掲載されている。即ち、前段により「選挙期日の告示または告示の有無を問わず」と記載されていることから、人気投票の対象となる選挙は、既に告示されているか、または告示されていないかは関係なく、特定の選挙であることが必要とされている。今回のプロジェクトは、2016年7月に予定されている第24回参議院議員選挙に向けたプロジェクトと明記されていることから、この選挙がまだ告示されていないものの、特定の選挙を指し示していることは明白だろう。

公職に就くべき者を予想する

「公職に就くべき者」という言葉の後には、条文内に括弧付けで次のように記載されている。

(衆議院比例代表選出議員の選挙にあつては政党その他の政治団体に係る公職に就くべき者又はその数、参議院比例代表選出議員の選挙にあつては政党その他の政治団体に係る公職に就くべき者又はその数若しくは公職に就くべき順位)

今回は参議院比例代表選出議員の選挙だということが明白なので、後段に注目すると、「政党その他の政治団体に係る公職に就くべき者又はその数若しくは公職に就くべき順位」と記載されている。「政党その他政治団体に係る」という部分については、このプロジェクトが自由民主党が行っている内容であることは明白なので、満たしていることは明白だ。次に「公職に就くべき者又はその数若しくは公職に就くべき順位」という部分。ここでは参議院比例代表選出議員の選挙という前提があるため、「参議院議員になるべき者又はその数若しくは比例代表名簿の順位」と同等と見るべきだろう。

自民党の特集ページでは、「得票数最上位の方を比例代表の候補予定者とする」「その後、自民党選挙対策本部にて公認決定する」と明記されている。すなわち、このプロジェクトにおけるネット投票で最上位となった人間が、自由民主党公認候補として参議院議員選挙に立候補する可能性はそもそもこのプロジェクトの前提であると考えられ、その確度も非常に高いだろう。このネット投票では、あくまで「自民党公認の参議院議員候補を決定する」ことが目的だと言えることになるが、そうなると焦点は、このネット投票があくまで「自民党公認の参議院議員候補を決定するために公認を出すべき人材の決定」しか意図が無いのか、それとも「参議院議員としてふさわしいのは誰か」という意図まで含まれているのかが大きなポイントだろう。

法の趣旨を拡大的に解釈すれば、「自民党公認の参議院議員候補を決定するために公認を出すべき人材の決定」する意図は当然に「自民党の参議院議員としてふさわしいのはだれか」と考えることもできるだろう。しかし、限定的に解釈すれば、あくまで公認候補としてふさわしいのが誰かであり、公職に就くべき者としての人気投票ではないと言い切ることもできるかも知れない。この点、ネット投票の投票権者を「2016年7月に予定されている第24回参議院議員選挙投票日において投票者の資格を有する者」としている実態が、実際に公職選挙への投票権がある者に絞った(ネット投票の選挙権には本来公職選挙法に定められた選挙権年齢を必ずしも当てはめる必要はないはず)ということで、公職に就くべき者の選挙とほぼ実態として同等と考える余地もあるだろう。(「予備投票」という観点が考えられる)

なお、「公職に就くべき者」という点で、ネット投票で選ぶ10名はまだ候補者ではないからセーフという考え方は通用しない。これについては、昭和38年3月6日の「警察庁宛て電話回答」に下記のように記載されている。

 法第138条の3中「公職に就くべき者」とは現に候補者であるものはもとより、候補者となろうとする者をも含むと解すべきか。
 お見込の通り。

すなわち、ネット選挙の時点で候補者ではなくても問題は無い。

人気投票の経過又は結果を公表してはならない。

そもそもこのネット投票が人気投票かどうかだが、これについては、昭和27年9月の「質疑集」に下記のように記載されている。

答 選挙に関して公職に就く者を予想してなされたものである限り人気投票制限の違反となる。

すなわち、「人気投票」という名称にこだわることなく、選挙に関して公職に就く者を予想してなされた選挙であれば、人気投票と言えるだろう。また、「経過又は結果を公表してはならない。」という点で言えば、このネット投票では中間発表を行うほか、その結果を公表してその最上位の者を公認候補とするのだから、世間一般に知れ渡るという意味でも、ここでいう「公表」に値するのは明確だろう。

まとめると、自民党の「オープンエントリー」は公選法違反(人気投票の公表)に問われる可能性が否定できない。ネット投票の趣旨があくまで「公認候補決定のため」と限定解釈されるか、「参議院議員に就くべき者を予想するため」なのかと解釈されるかに大きく依存するだろう。

※本記事中に引用した「質疑集」「国警質疑集」「警察庁宛て電話回答」の出典は、選挙制度研究会『選挙関係実例判例集 第十六次改訂版』(ぎょうせい、2011年)による。

大濱﨑 卓真

大濱﨑 卓真ジャッグジャパン株式会社 代表取締役社長

投稿者プロフィール

1988年生まれ、三鷹育ち。青山学院高等部卒業、青山学院大学中退。国会議員秘書、システム開発会社でのサラリーマンを経て、2010年独立。東日本大震災の際には、帰宅困難者向けに避難所を地図にした Google Maps「東京都内避難場所」を震災発生直後にリリースし話題に。現在は、選挙コンサルタント、自由報道協会記者という立場のほか、教育系会社取締役など、複数の法人役員を兼務している。

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