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ホリエモンこと堀江貴文氏の呼びかけで、地方議会議員をなくすことを目標とした政治団体、「地方議員ゼロ」の会が、東京都議会選挙に向けて設立された。当の堀江氏自体は当該団体の役員にも就任していないどころか所属もしておらず、また都議選出馬の意向もないそうである。堀江氏は小池都知事との対談の中で「議員ゼロの直接民主制を現代のテクノロジーで実現するのって面白いんじゃない?って言ったら、やりたいと言う会員がいたので、やってもらってるだけ」と述べていたことから、あまり本気にするような話ではないだろう。しかし、議員という制度自体が本当に必要なのかを考えるきっかけにはなるであろう。

堀江氏の意図していることの詳細は分からないが、AI(人工知能)を中心とした技術の発展により人々の政策志向等を完全に判断できるようになれば、政策判断を議員にやってもらう必要はないということなのであろう。すべての人に不満が生じないような「富の分配」を機械が決定してくれるようになれば、議会はもとより内閣総理大臣・首長といった政治家もいらないし、政党も必要なくなるかもしれない。つまり民主主義自体が必要なくなるであろう。

しかしこれに対しては、人々の政策趣向が機械によって完全に判断できるようになるまでには時間がかかるし、それができたとしても「富の分配」の決定は、本質的に個人間で利益が相反するので機械がやりづらいのである(注1)。少なくとも当面は民主主義の必要性が失われるとは思えない。

民主主義が必要であり、政策判断を行うのは人間であるべきとしたら、少なくとも行政のトップである大統領・内閣総理大臣・その他の閣僚・首長は、必ずしも直接的な選挙ではないにしろ民意が反映された形で選ばれるべきである。しかし、個々の「議員」というものは本当に必要なのかはもう一度よく考えてみる必要がある。個人的には、「政党」は必要だが現在のような「議員」という存在は必ずしも必要ではないと思っている。少なくとも国会や都道府県議会は(多数派プレミアムつき)比例代表制を導入し(注2)、議会が開催される時だけ政党職員を無報酬の「議員」として登録し、質問・答弁・採決を行えるようにすれば十分なのではないかと思う。

何故ならば、国会や都道府県議会(広域地方政府)は議会の政党化が進んでいる。政党より個人という意見もあるだろうが、結局は党議拘束に象徴されるように各政党の意思決定により議会における議決結果が決まるのである。高額な議員報酬や議員特権を与えるから「議員の資質」が問題になるのであって、単に政党を選ぶならば、政党関係者に特別に高額な報酬を払う必要もないし特権も与える必要もない。政党職員が、議会がある日にだけ議会に登庁し、質問・討論・採決等を行えればよいのである。実際に、ドイツの連邦参議院は各州政府が送り出した州ごとの代表者を議員として構成されるが、議員自体は固定されておらず議題となる法案によって入れ替わることがある。

仮にこのような制度が導入された場合は、今よりも政党職員の数は増えるだろうし、公務員並みの給与も保証されるべきなので、各政党に対する政党交付金の額は増えるだろう(少なくとも私はそうすべきだと思っている)。しかしながら議員特権を廃止できるので、トータルで見れば行政の議会関係費と政党交付金の合計額を減らすことができるかもしれない。

さらに、政治に携わりたい個人にとっても、選挙に多額の私財を費やし選挙に負ければ無職で次の選挙に勝つまでは浪人という、人の一生に関わるリスクを減少させることができる。実際には都道府県議会以上の規模の選挙になると、選挙で「政党」が「個人」より選ばれている側面が非常に強いのに、選挙に関する出費の多くを候補者という「個人」が負担し全般的な責任も持つという現状は、果たして公正だといえようか?

一方で行政に直接かかわる「政治家」の選出方法については、内閣総理大臣は実質的な大統領制となる首相公選制(首長と同様の権限を持つ)にすればよいし、個々の閣僚は政党の職員であっても議会の信任を得れば就任できるようにすれば良い。地方レベルでも同様であり、議会の信任を得る形で政治任用職を増やせばよいのである。さらに、各政党の党首選挙に関しては、これまで通り各政党が有資格と認める党員間で行えばよい。

最後に、筆者は安倍政権の下での改憲には反対の立場ではあるが、改憲そのものには反対でない。憲法改正に関しては、9条ばかりではなく議会のあり方を含む統治機構改革の議論がもっと出てきてよいと考える。首相公選制や議会のあり方については、むしろ野党のほうから安倍政権を倒した後にこうしたいとの具体的なヴィジョンを聞いてみたいものである。例えば共産党の志位委員長はインタヴューで、当面の天皇制存続は認めるとしても天皇制自体は民主主義にふさわしくなく、将来的な「民主共和制」の実現を目指すと述べている。仮にそれを実現させるとしたら、天皇ではない国家元首を新たに定めることが必要になる。今更それを国家主席と呼ぶのはいかにも時代遅れなので、大統領制の導入を提案するということになろう。当然、大統領制の導入には憲法改正は不可欠となる。

 

(注1)

所得額に代表される経済状態などによって、個人間で望む政策が異なるという問題が存在する。例えば、公共経済学・公共選択論における非常に単純なモデルにおいては、高所得者ほど低い所得税率を望み、低所得者ほど高税率を望むという結論が導かれる。これは低所得者ほど再分配を多く望むというのが理由である。つまり、多くの経済問題において、社会の全員が望む政策が存在するケースは少ない。さらに言えば、経済学(または数理政治学)的に考えれば、仮に個人の幸福の状態(効用)が計れるとしても、社会の多数派が望む政策が個人の幸福の総和を最大化させるとは限らない。

どこまで「富の配分」が許容されるかは、結局は民主主義による決定にゆだねられるしかない。仮に機械が民主主義の結果を予想できたとしても、機械の予想を持って選挙の代わりとするようになるのは相当先のことだろう。

(注2)

最も得票数が多い政党(または政党連合)に安定多数となる議席を必ず付与するという比例代表制で、イタリアで導入されている。通常の比例代表制では各政党の得票率と獲得議席比率ができるだけ一致するようになっているが、この方式だと一つの党が単独で総得票数の過半数を得るケースは少ない。必然的に連立を組まざるを得なくなり、国民が政権の枠組みを選べないという問題が発生する。戦後の衆議院総選挙の歴史を見ると、一般的に選挙区票の総得票率が40%以上であれば、議席占有率が50%以上を得ている。日本で多数派プレミアムつき比例代表を導入するならば、ある政党(政党連合)に対してどれくらいの得票率ならば安定多数となる議席を与えるべきかの判断については、得票率40%という数字が一つの目安になるであろう。

鈴木しんじ

鈴木しんじ東京工業大学リベラルアーツ教育研究院非常勤研究員

投稿者プロフィール

1972年生まれ、東京都中野区出身。東京工業大学博士(理学)。
東京外国語大学外国語学部フランス語学科卒、東京工業大学大学院社会理工学研究科博士課程修了。専門は政治経済学、公共経済学。連絡先はinfo@suzuki-shinji.net (@は半角に書き換えてください。)

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